DC 開発フォーラム 第22回ワークショップ記録
10月10日(木)18:30-20:00
「インターネットが紡ぐ教育イノベーション?BoP出身者が国作りを担う日を夢見て」
発表者:税所 篤快 氏 (五大陸ドラゴン桜e-Education project共同代表)
【動機】
• 失恋が原動力であった。
• 坪井ひろみ氏の『グラミン銀行を知っていますか』を読み、本を読んだ翌日には夜行バスに乗って同氏に会いに秋田に向かう。同氏から「とにかく現場に行ってください」とアドバイスを受け、バングラデシュへ向かう。
【e-Educationモデルの誕生】
• グラミン銀行のチームメンバーと市場・病院など色々な場所を調査した。そのなかで、国際協力機構の担当者から、バングラデシュでは国全体で約4万人教員が不足している話を聞く。
• 税所氏は大学進学を控え、東進ハイスクールでのビデオ講義を受講することにした。勉強は得意でなかったが、ビデオ講義は分かりやすく、また講師陣も人生の幅がある人が多く次第に勉強が好きになった。その結果、希望の大学へ入学を果たした。
• バングラデシュでカリスマ講師の授業を撮影するため、最難関のダッカ大学で100人にアンケートを実施した。そのなかで、マヒーンという人物が税所氏の活動に当初より賛同し、講義ビデオの撮影役を担当している。
• 2010年からハムチャー村で授業を始め、当時は高校3年生約30人が受講した。
【活動をする上での困難】
• お金:東進スクールの恩師から80万円を出資金として受け取る。
• 停電:停電対策として発電機を購入したが、とてもうるさかった。そのため、UPS(無停電電源装置)を購入した。
• スコール:泥道で学生が教室まで来られないといった問題も生じた。
【活動1年目の結果】
• ビデオ講義だけではモチベーションが続かないため、ダッカ大学へのスタディツアーを実施した。その時に、ダッカ大学構内で男女が話をしている姿を見た村の学生は、それがモチベーションとなり勉強に励むようになった。
• 半年間のプログラムを実施し、30名の受験生のうち、1名がダッカ大学、他18名も大学に合格した。のちにハムチャー村の奇跡と呼ばれるようになった。
• これにより、税所氏のバングラデシュでの活動が日本で書籍化されたり、色々なメディアに出演したりする機会ができた。
【活動2年目の困難】
• 出資金の80万円を使い切ってしまっていた。そのため、ある経営者からの支援を受け、資本金100万円を元手に、受講生に2,000円ほどの課金を求めるビジネスモデルを作り、ビデオ講義を実施することになった。
• 300人の受講生を目標にしたが、1千枚のチラシを配布しても問い合わせは2件しかなかった。
• 結局2年目は11名の受講生が集まり、ダッカ大学にも合格者を輩出したが経営者からは資本を解消された。
【活動3-4年目】
• 活動3年目の資金(300万円)は東京大学からのサポートを受け活動を展開した。併せて、活動のインパクトエバリュエーションを行うことになり、近々その論文が発表される。
• 4年目は京都大学からのサポートを受けた。
• 3-4年目では約1,000人の受講希望者が集まった。
【5大陸への展開】
• ヨルダン:数学に焦点をあて、有名な先生のビデオ講義を高校で実施。
• ルワンダ:理数教育に焦点をあてた。
• パレスチナガザ自治区:ガザ地区では、学習障害を持つ疑いがある子供が見られる。そこで、ヨルダン大学で学習障害の研究を行っている教授から、ガザ地区の先生を対象にしたビデオ講義も実施した。このプロジェクトはクラウドファンディングを利用し活動資金を集め、国連と一緒に活動を行った。
• フィリピン、インドネシア、ミャンマーなど色々な国で、自身が稼いだバイト代を元手に、日本人大学生が各地域で有名な先生を見つけて活動を展開している。
• ビジネスモデルが出来ていないので、今後の持続性が課題となっている。
【質疑応答】
• エバリュエーションはバングラデシュだけで実施している。評価する際のデータは、毎週のテストの成績、家族構成、やる気などのデータを使用している。
• ヨルダンなどのビデオコンテンツは、現地で聞き込みを行い評判の良い先生を探している。ルワンダはまだ予備校がないため、高校でヒアリングを実施し有名な先生を見つける。
• ビデオ講義で使用する言語は現地語である。
• 今後展開する際の国選びは、税所氏及びメンバーの興味で選定する。
• バングラデシュではビデオ講義の1-2割を毎年アップデートしている。また、ビデオの撮影には3週間から1ヶ月要する。
• バングラデシュでの組織は法人格を有する。現在20名のメンバーがおり、その半数が日本人である。今後はNPO組織を作る予定である。
• 学生の募集は、2年目はチラシを配布し、3年目は学校でプロモーション活動を実施した。
• バングラデシュでの活動が中途半端な段階で、5大陸に活動を展開したことで資金などのリソースが分散してしまった。その一方、ガザ地区でのモデルのように新たな活動モデルも生まれた。バングラデシュの活動を支えるマヒーンのようなカリスマ的な人物がなかなかいないため、今後はバングラデシュでの活動が次のステージに進むように仕掛けたい。
ワークショップには約25名にご参加いただきました。ワークショップ終了後は近所のレストランで懇親会を行いました。
第22回ワークショップの議事録:10月10日(木)「インターネットが紡ぐ教育イノベーション?BoP出身者が国作りを担う日を夢見て」
- 第21回ワークショップ「被災地のその後:子どもの学びとコミュニティ復興の現状と課題−官民の垣根を越えて被災地を支援するプロジェクト結からの報告−」議事録
- 2013年11月12日号(「国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)開催」他 )