第23回ワークショップ議事録: 11月6日(水)「未来志向の社会起業家支援~東北を越えてアジアの発展へ向けて~」

ワークショップ議事録
「未来志向の社会起業家支援~東北を越えてアジアの発展へ向けて~」
【プレゼンター略歴】山本 未生(やまもと みお)
一般社団法人World in Asia代表理事。2011年、東日本大震災を機に、米国およびアジアのプロフェッショナルと共に、日本およびアジアで社会起業家へ社会的投資を行う一般社団法 人World in Asia(WiA)を設立。2013年7月より同代表理事。2013年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業。WiA設立以前は、化学メーカーで働く傍ら、ビジネスセクターとソーシャルセクターの橋渡しをしようと、2005年よりSVP東京(ソーシャルベンチャー・パートナーズ 東京)のパートナーとして、革新的な社会起業家を「汗と時間とお金の投資」で支援。
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フィリピン・マニラのスラムでのホームステイやマレーシアの孤児院でのインターンの経験がきっかけとなり、有効な支援には資金が必要と痛感。民間セクターからの支援を考えるようになり社会人として働く傍ら社会起業家として働くようになった。
MITに留学をする直前に東北大震災があり、東北支援のためにWorld in Asia(WiA)を立ち上げ、ボストンから遠隔で働き、MIT卒業後にフルタイムで働くようになる。
World in Asiaのミッション:ポテンシャルがある社会起業家を発掘、支援を行う。日本のみならずアジアの起業家も支援するしていく予定。
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財団から財政支援を頂き、社会起業家へのハンズオン支援やパートナーシップ構築等を行っている。
社会起業家の定義:我々の定義「社会の負の連鎖を正の連鎖を持続的に変えることのできる人」
社会起業家の事例:ケニアのスラム支援。土地を政府から買い取りタイトルを得て、治安や衛生面の環境改善を目指して家の改善するための金融アクセスを支援する。これにより生活環境が悪いスラムでは投資もできなくてにいつまでも貧困のままという負の連鎖から、生活環境の改善により収入機会が増えてその地区の社会経済の発展を促すという正の連鎖に転換することができる。
インドと東北の事例。東北の障碍者を雇用する企業への支援。インドの難聴者(被差別者)に対するトレーニングを行うNPO。社会起業家という観点から見ると、障碍者に対する意識、彼らが働くために必要な教育の提供などの課題は先進国も途上国も共通。
Hybrid Value Chain:震災後、大学生を通じてが東北の子供たちの学習支援を行っている始めた。最初は避難所で行っていたが、その後既存のオンライン教育を導入。オンライン教育企業と地元NPOをつなげ、単にオンライン教育を行うだけではなく現地でコーチやメンターの育成を行い、低所得者層に効果的な教育の機会を提供を実現した。
今までの2年間は東北の支援を行っていたが、これからはアジア地域にインパクトインヴェストメントを展開したい。様々な専門性を持っているパートナーを募集している。
パートナー募集詳細はWorld in Asia公式HPまで http://worldinasia.org/
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【質疑応答】
1.社会起業家は負の連鎖を正の連鎖に変えるという意味ではNGOでも企業内でも可能であり、とても幅が広いと感じた。
>社会起業家に決まった定義はなく、我々が好きな定義だとそうだ。他のNGOでは違う定義をしており、例えば社会的成果と財務的成果の両方を求める組織という定義もある。株式会社も社会企業家になりえるが、収益追求が目的なのか不透明になりやすいので一定の収益を社会投資にまわすなど明確なコミットメントが必要。フィリピン人が立ち上げたSEELSというNGOは株式会社という形で設立した。
2.インドで学校を建設支援した際に低所得者層を雇用をしたが、勤務態度が良くなくてそもそものプロジェクトがうまくいかない事例があった。そのような場合はどう対処しているか。
>マネージャーだけは外から連れてくるか作業内容を変える、プロジェクトデザインを変えることもできるが、正面から対応することもできる。住友化学のネットをタンザニアで技術移転をした際に同様にスキルの問題があった。その際にはキャパシティビルディングを行った。具体的にはマネージャーに折り紙を教えて手の器用さを鍛えながら長期に渡り支援し、成果があった。
3.World in Asiaの仕事内容について、パートナーシップ構築について、もともと関係なかった2つの組織を継続的につなげるのは非常に難しいと思う。実際はどのようにしているのか。また失敗の事例はあるか?
>Eラーニング企業にとってはBOPの可能性があるということは東北のNGOとつながってから始めてわかった。さらに海外への展開も検討している。そもそもは友人を通じて知り合った。World in Asiaではそのような異なる組織間の意見調整をミーティング等に参加しながら行っている。つなげる組織をきちんと事前に評価理解、評価していないとパートナーシップは難しい。
4.支援をしている起業家はもともと東北にいた起業家なのか、他地域のものなのか。東北の地域性は他の地域とは異なる。
>現在9つの社会起業家への支援を行っているが東北にあったものと東北以外にあったものを持ってきたものの2グループがある。他地域のものをそのまま東北にもってきてうまくいかない事例もあったので、そこは事業内容を現地の需要にあわせて調整している。
5.福島は事情が違うが、どのようなことを行っているか。
>子供への支援も子供の数そのものが減っているので難しいが、子供に対する環境教育分野で挑戦しているNGOもいる。
6.World in Asiaはどのように収益を確保しているのか。日本ではこのような仲介的なNGOは簡単ではないと思う。
>ファンドを作りたいと考えている。我々自身が人を抱えるモデルではなく、ソーシャルベンチャーパートナーシップという制度を作り、パートナーから一定額を拠出してもらい、社会起業家への資金へを確保したい。日本固有の問題としては社会問題のマーケットが小さい。アジア全体に展開したい。
7.支援先のファイナンシャルサステナビリティーについて、社会起業家によっては利益がでないような貸し先もあるが、社会効果と財政効果をどうバランスをとっているのか。
>現状は資金のキャパシティーの問題でシードグラントしか出しておらず、ローンやエクイティーへの支援は行っていない。社会効果と財政効果のバランスについての基準はこれから作っていきたい。
ワークショップ終了後は山本さんを交え、参加者約25名でのネットワーキングセクションが行われました。