第239回BBL議事録:2014年2月25日(火)「アジアの開発金融とPPPによるインフラ整備」

DC開発フォーラムでは2月25日(火)、ワシントンDCにて、東京大学公共政策大学院・西沢利郎教授をお迎えして、「アジアの開発金融とPPPによるインフラ整備(“Development Finance and PPPs for Infrastructure Investment”)」のテーマのもと、第239回BBLを開催しました。議事録は以下をご覧ください。

2月25日(火)午後12時15分より

ゲストスピーカー:
西沢利郎氏(東京大学公共政策大学院教授)

伊藤隆敏氏(東京大学公共政策大学院院長)

 

1.西沢利郎氏 プレゼンテーション:「アジアの開発金融とPPPによるインフラ整備」のテーマのもと、アジアの経済状況の変遷、アジアにおける開発金融の内訳・性質の変化、投資促進の必要性などについてデータに基づきご説明いただいたうえで、こうした文脈で公民連携(PPPs)が果たしうる役割と課題についてお話いただきました。詳細はパワーポイント(PDF)をご覧下さい。

 

2.西沢利郎氏 質疑応答

Q1:公民連携(以下、PPPs)におけるパブリックセクターの役割とは。

A1:発展途上国においては様々なリスクがインフラ部門への民間参入を困難にしている。このためパブリックセクターがリスク軽減のためにリーダーシップを発揮する必要がある。また、PPPsは、公民双方の多数の関係者間の長期にわたるリスク分担であるため、複雑な契約関係をまとめあげる必要がある。このため、PPPsを成功させるためには、パブリックセクター側の能力向上(キャパシティービルディング)が必須である。

参加者からのコメント:アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)はキャパシティービルディングを好む傾向にあったが、最近は直接的なインフラ開発を好む傾向にある。

 

Q2:PPPsを推進する雰囲気が薄れてきているようにも感じるが、その点についてはどう考えるか。

A2:アジア通貨危機以前は、世銀の一部などに制度的枠組みさえ整えればインフラ部門に民間は参入してくるという楽観的な考え方もあった。しかし、パブリックセクターがリスク分担を通じて一定の責任を負うことや、PPPsの成功にはパブリックセクター側の能力向上(キャパシティービルディング)が必須であることが理解され、PPPsを安易に推進する雰囲気が薄れているのであれば大きな進歩である。

 

3.伊藤隆敏氏 プレゼンテーション

  • アベノミクスにおける第一の矢「大胆な金融政策」と第二の矢「機動的な財政政策」は成功を収めている。
  • 第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」については、「強い農業」をつくる必要がある。そのためにも、ブランド農作物の輸出促進、規模拡大による農作物価格の引き下げが必要となる。農業分野における規模の経済性を阻害する要因として法規制がある。(1)転作補助金の廃止、(2)農地賃貸借の促進を進める必要がある。
  • 天然ガスが高価であることから、原発の再稼働も成長戦略を支える上での一助となりうる。
  • 年金積立管理運用独立行政法人は、厚生年金と国民年金の積立金約120兆円を運用している。そのうち60%は日本国債で占められており、この比率を低く設定することが必要である。

 

4.伊藤隆敏氏 質疑応答

Q1:日本国内で農業の規模の経済性を追求することは可能か。

A1:野菜・果物では難しいが、米・牛乳であれば可能である。農作物をブランド化して輸出することが求められる。

 

Q2:建設業界では労働力不足が問題になっているが、その点についてはどう考えるか。

A2:南米から日系移民の子孫が日本で労働者として働いているケースはあるが、いずれにせよ労働者不足問題を解決するための長期的な計画が必要になる。

 

以上

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