DC開発フォーラムMLのみなさま、ワシントンDCでは連日真夏日が続いておりますが、世界各地のみなさまはいかがお過ごしでしょうか。先日7月22日(月)に開催されました第61回ワークショップでの配布資料を、スピーカーである紀谷昌彦氏の許可をいただきましたので、共有いたします。TICAD7を目前に、ぜひご一読ください!次回のワークショップ・BBLでも多くのみなさまのご参加をお待ちしております。以下、本文テキスト貼り付け (添付PDF資料と同じものです)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[ワシントンDC開発フォーラム・第61回ワークショップ]
二国間支援と国際機関との連携による相乗効果をどう実現するか
-南スーダン,TICAD7,国際保健を例に考える-
2019年7月22日
外務省国際協力局参事官 紀谷昌彦
masahiko.kiya@mofa.go.jp
1 問題提起:「日本の強み」を「国際社会による開発の取組」に生かす
(1)世界の開発の現状
・大きな改善,未だに残る貧困と紛争,国内の格差が大きな課題に
(2)国際社会による開発の取組
・アジアの奇跡,アフリカの困難(HIPCs)
・MDGs・PRSP・援助効果向上
・中国をはじめとする新興国の支援と民間資金の重要性の高まり
・SDGsが拓く可能性(全てのアクターが全てのアジェンダに参画)
(3)日本の開発協力
・アジアで多大なる成果,ODA額に伴う存在感の向上と低下
・オーナーシップとパートナーシップの原則の国際スタンダード化
・人間の安全保障,人材育成,分野別の取組(防災,保健等)
・今,何ができるか,その橋渡しとしてバイとマルチの効果的活用が鍵
(マルチは日本の「苦手科目」だが「伸びしろ」)
2 バイとマルチのそれぞれの強み,そして相乗効果
(1)バイ(二国間支援)の強み(特に日本を念頭に)
・国内の知見・ノウハウ・参画を活用できる
・「顔が見える援助」で政治的利益と国内の共感・支持が得られる
・機動的にきめ細かく支援内容を調整できる(特に国際社会と立場が違う場合)
(2)マルチ(国際機関との連携)の強み
・高い専門性と国際的ネットワークが活用できる
・国際社会への説明責任を通じて評価と正統性が得やすくなる。
・国際社会と連携したスケールアップが容易になる
(3)バイとマルチの相乗効果を目指す:バイの成功をマルチに流し込む
・危険性:バイとマルチの「没交渉」,縦割りの典型的弊害,「庭先症候群」
・開発外交では「競争」と「協調」が同時に進行,戦略的な取組が不可欠
・マルチで誇れるバイは何か:「ジャパン・アジェンダ」を探せ!
→SDGs(推進本部,STI for SDGs),人間の安全保障,自由で開かれたインド太平洋,質の高いインフラ,債務持続可能性,人道と開発と平和の連携,保健(UHC,母子手帳,高齢化),栄養(IFNA),防災,教育(理数科教育,持続可能な開発のための教育(ESD)),人材育成(特に産業人材育成),南南協力,平和構築(制度構築,能力構築),産業政策,カイゼン,法制度整備,地雷対策,廃棄物処理,連結性・回廊構想,農業(米作(CARD)、市場志向農業(SHEP)),アフリカ開発(TICAD),開発経験・開発援助経験に関する知見(JICA開発大学院連携),イノベーション・・・
・知見とツールを動員する:オールジャパン体制の構築(省庁・組織を超える,SDGs推進本部も活用)
・スケールアップへ:バイの成果を基盤に,オーナーシップへの鈴付け,パートナーシップの探求,難易度は高いが最重要,これを見越してバイを仕込む
・広報(コミュニケ―ション戦略)の重要性:内外への発信と理論武装が鍵
3 事例から考える
(1)南スーダン
・最新の国連加盟国,日本が国連PKO参加,世界最大規模の人道危機が進行中
・現地ODA-PKOタスクフォースで事業・広報・安全確保を強化
→例:自衛隊施設部隊のWFP事務所周辺道路補修,UNMAS地雷啓発協力
・国際機関連携無償の活用(「細切れ作戦」),他ドナーの巻き込み
→例:地方政府徴税制度支援をアフリカ開銀資金でスケールアップ
・日本の強み=「自立・自助努力を重視する主要国である日本が関与することで,南スーダンの当事者の努力を後押しするとともに,国際社会との連携・協調を推進するための橋渡しの役割を担う」
(2)第7回アフリカ開発会議(TICAD7)
・バイ・マルチ連携の先駆け(日本,国連,世銀,UNDP,AUCの共催)
・危機感(アフリカの変化,国際的関心の向上,日本の貿易・投資は横ばい)
・TICADプロセスの資産を活用,モデルチェンジ/バージョンアップ
・「アフリカビジネス協議会」:外務省・経産省・経団連・同友会を核に常設
・JICA・JETRO・UNDP連携の中堅中小・スタートアップ企業支援
・農業(CARD),栄養(IFNA)をモデルにパートナーシップを拡大
・ネットワークのハブを目指す,アフリカ開発のダボス会議・オリンピックへ
(3)国際保健
・マルチ:グローバルファンド・Gavi:外務省,WHO:厚労省,世銀:財務省
・バイ:JICA,国立国際医療研究センター(NCGM)
・オールジャパン体制:グローバルヘルスと人間の安全保障運営委(JCIE)
・ジャパン・アジェンダの進化・深化:感染症対策,保健システム強化,UHC,保健財政,規制制度調和,アジア・アフリカ健康構想,高齢化・・・
・日本発の母子手帳とWHOの個人健康情報(Personal Health Record)の関係
・G20大阪サミットでは初の財務大臣・保健大臣合同会合を実現,
更にTICAD7,UHCハイレベル会合,栄養サミットも活用
→国際会議でのコンセンサスづくり,現場での実施確保の連動
・結局のところ,途上国現地での援助協調が鍵
→グローバルファンド,Gavi,世銀,WHOなど主要パートナーが途上国政府のオーナーシップを尊重して支援するよう確保
→そのためにJICAやNCGMを効果的に動員,これが本丸
4 これから何をすべきか(Next steps / Asks to participants)
(1)戦略的思考を共有する
・「ジャパン・アジェンダ」を意識化し,国際競争力を高める
・バイとマルチのツールの双方を動員する
・これは「秘密」ではない!:内外に発信し議論して,打たれ強くする
(2)マルチに向けて攻める
・国際機関(IFIs,MDBsを含む)のリソースは使えるはず
・日本のODAは今のところ頭打ち,触媒の役割に転換することが効果的
・バイ担当者・マルチ担当者の双方に責任と可能性あり,協働が要請
(3)日本の世界史的役割に思いを致す
・『日本のフロンティアは日本の中にある』(「21世紀日本の構想」懇談会),『「課題先進国」日本-キャッチアップからフロントランナーへ』(小宮山宏)
・非欧米先進国である日本の成功,アジアの成功をアフリカ,世界全体へ
→国益は,安全・繁栄・価値(自己実現・ミッションを含む)
(4)実行する,継続する
・一人では何もできないが,一人の可能性は無限,実行して「わらしべ長者」に
・情熱と気概を共有し,それぞれの持ち場で出来ることを始め,続け,つながる
・日本人は「恩送り」する立場,情けは人のためならず,何のために生きるのか
【関心を持った人のために】
紀谷昌彦 (2019)『南スーダンに平和をつくる-「オールジャパン」の国際貢献』(ちくま新書1382)筑摩書房(kindleでも入手可)。
紀谷昌彦・山形辰史 (2019)『私たちが国際協力する理由-人道と開発の向こう側』日本評論社,8月9日出版予定(追ってkindle化予定)。
國井修 (2019)『世界最強組織のつくり方-感染症と闘うグローバルファンドの挑戦』(ちくま新書1430)筑摩書房,8月7日出版予定(追ってkindle化予定)。
Rosling, Hans with Anna Rosling R. and Ola Rosling (2018)
Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World – And Why Things Are
Better Than You Think, Flatiron Books(上杉周作・関美和訳『ファクトフルネス-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』日経BP社 2019年)(kindleでも入手可).
Kato, Hiroshi, John Page, and Yasutami Shimomura eds.
(2016) Japan’s Development Assistance: Foreign Aid and the Post-2015
Agenda, Palgrave Macmillan(kindleでも入手可).
(以上)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーDC開発フォーラム・勉強会担当大島
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———- Forwarded message ———From: DC開発フォーラム <dev.forum.workshop@gmail.com>Date: Thu, Jul 11, 2019 at 10:30 AMSubject: DC開発フォーラム 第61回ワークショップのご案内:7月22日(月)紀谷昌彦氏(外務省)「二国間支援と国際機関との連携による相乗効果をどう実現するか-南スーダン、TICAD7、国際保健を例に考える」To: DC-development-forum <DC-development-forum@googlegroups.com>
DC開発フォーラムMLの皆様
DC開発フォーラムでは、平日の夜を利用して、途上国の開発に関わる実務家や学生を中心にプレゼンと自由な議論を行い、知識を深めるとともに何らかの行動に結び付けていくことを狙いとしたワークショップを開催しています。今回のテーマとスピーカーは以下の通りです。関心のある方は奮ってご参加ください。
「二国間支援と国際機関との連携による相乗効果をどう実現するか-南スーダン、TICAD7、国際保健を例に考える」
【テーマ】
日本はグローバルな課題解決に指導力を発揮するために、各種の国際会議や個別国の現場で、二国間支援とともに国際機関との連携を打ち出し、推進しています。日本が二国間支援と国際機関との連携の双方を効果的に活用し、相乗効果を上げるためには、どのような発想や工夫が必要でしょうか。冒頭、スピーカーから南スーダン、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)、国際保健の事例を紹介しながら問題提起を行い、引き続き参加者間でそれぞれの経験を踏まえての意見交換を行い、議論を深めます。
【スピーカー】
紀谷 昌彦(外務省国際協力局参事官、TICAD担当大使)
1964年函館市生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年外務省入省。ケンブリッジ大学歴史学部国際関係論修士号及び同大学法学部国際法修士号取得。在ナイジェリア日本国大使館、防衛庁防衛局、外務省欧亜局・大臣官房・経済局、在米国日本国大使館一等書記官、在バングラデシュ日本国大使館参事官、外務省総合外交政策局国際平和協力室長、同国連企画調整課長、防衛省地方協力局提供施設課長、在ベルギー日本国大使館公使を経て、2015年から2017年まで駐南スーダン大使。現在、外務省中東アフリカ局アフリカ部・国際協力局参事官、アフリカ開発会議(TICAD)担当大使、NGO担当大使。
【日時】
2019年7月22日(月) 18:30-19:45
【参加費】
当フォーラムのサーバー代等の活動維持費のため参加費1ドルを現金で徴収いたします。
【会場】
世界銀行本部 The
World Bank, 1818 H Street, NW Washington DC 20433
入館方法や会議室の詳細などは、参加登録者に送付される会場案内にてお知らせ致します。会場案内をよくご確認の上ご来場ください。
【参加登録】
参加ご希望の方は、下記登録フォームより7月20日(土)までに必ず参加登録をお願い致します。
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dDVmdGZjV2ZnQ2ctb1lUR1JhODBXZ3c6MQ#gid=0
登録にご不明の点がある場合、または、当日朝までに会場案内のメールが届かない場合は、ワークショップ担当(dev.forum.workshop@gmail.com)まで、ご連絡ください。
過去のワークショップの内容はこちらでご覧いただけます。
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皆様のご参加をお待ちしております。
DC開発フォーラム・勉強会担当大島
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