【dev-info】2025年1月21日号(ILOは最新の雇用情勢について分析したWorld Employment and Social Outlook Trends 2025を出版 他​)

2025年1月21日発行

http://www.devforum.jp/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス

-(dev-info)-

皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【1】ワシントンDC開発フォーラム便り

「経済連携協定と国際労働基準」石野瑠花(官公庁・東京)

 

【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック

JICAは、バングラデシュ政府との間で、技術協力プロジェクト「先進技術を活用した森林管理による沿岸レジリエンス強化プロジェクト」に関する討議議事録に署名しました(記事)英国は、英国の成長と安全保障を推進するため、英国ソフトパワー評議会を立ち上げました(記事

UNHCRは、コンゴ民主共和国東部で紛争が激化し、今年に入ってから既に23万人が避難を余儀なくされたと報告しています(記事

英NGOネットワークBondは、国際開発における運営リスクと財務リスクをテーマにしたワークショップを開催しました。活動している国が制裁対象となったら、あるいは現地に銀行がない場合などの状況でのヒントをHPで紹介しています(記事) 他

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り

 

タイトル:経済連携協定と国際労働基準

執筆:石野瑠花(官公庁・東京)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一年前にエッセイを投函した際には介護施策を担当していましたが、今年は一転して国際労働施策を担当することとなりました。全く異なる分野を次々と経験できるのは、メンバーシップ型の面白さだと感じています。

さて、「国際」×「労働」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。デジタル経済やグリーン経済への移行、ジェンダー平等への対応等、世界共通の課題に関する多国間枠組みでの議論、ILO(国際労働機関)における基準設定、労働基準向上に向けた技術協力、さらには国境を越えて移動する人々の労働権保護など、想像される内容は様々でしょう。

これらに加え、近年では経済連携協定(EPAやFTAなど)に労働に関する規定を盛り込む事例が増えてきました。かつてGATTからWTOに移行する際、WTOにおいて労働問題を扱えるようにすべきだという意見が一部の先進国から出ました。しかし、競争優位を喪失することへの懸念や、先進国による「隠れた保護主義」への批判、「労働基準の未遵守に対して貿易制裁ではなく技術援助で対応すべき」などの主張が発展途上国から示され、1996年のWTOシンガポール閣僚会議において、WTOではこの問題は扱わず、労働基準を扱う権限があるのはILOであると確認された経緯があります。その後、ILOにおいて1998年に「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」が採択され、加盟国は、労働における基本的原則及び権利(結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認、強制労働の廃止、児童労働の撤廃、雇用及び職業における差別の排除)の尊重、促進、実現に向けた義務を負うこととされました。これらの基本原則に対応する8つの基本条約を未批准の場合でも、この原則の推進に向けて努めるべきとされた点がユニークだと言えるでしょう。

近年では、貿易や投資を促進するために締結される経済連携協定に、こうした内容を盛り込む動きが増えています。例えば、日本が締結しているものでは、日EU・EPAにおいて、労働基準の緩和や引き下げを通じて貿易や投資を奨励してはならない旨が規定されている他、ILO基本条約等を批准する努力義務が定められています。また、労働規定の遵守状況に問題が生じた場合には、政府間協議を行い、解決に至らなければ専門家パネルに提訴する仕組みも設けられています。同様の規定は韓EU・EPAにおいても置かれており、実際に専門家パネルに提訴された事例もありました。多国間枠組みであるCPTPPにおいても、批准に向けた努力義務規定が設けられている他、労働規定の履行状況を確認し合い、労働基準の向上に向けた協力を促進するための委員会が設置されています。

経済発展と労働環境の改善は車の両輪であるべきであり、貿易や投資を促進する経済連携協定において、労働に関する規定が盛り込まれるようになってきたのは、前向きな動きだと言えるでしょう。今後も引き続き、動向を注視していきたいです。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【2】 開発フォーラム新着情報チェック

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を

|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、

└――┘devinfo.mailmagazine@gmail.com までご連絡ください

┏━━━━━━━━━━━┓

– 日本関連 –

┗━━━━━━━━━━━┛

  • 外務省はJPO派遣候補者選考募集要項を公開しました(応募受付は2月3日から)(記事)。
  • 外務省は国際機関人事センターは、JPO 派遣候補者選考説明会を1月24日に開催します(記事)。
  • 世界食糧計画(WFP)との間で、スーダン共和国に対する供与額1.5億円の無償資金協力「食糧援助(WFP連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • インドネシア共和国との間で、総額904.56億円を限度とする2件の円借款(「行政官管理育成強化計画、供与限度額70.48億円」、「パティンバン港開発計画(第三期)、供与限度額834.08億円」)に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • タンザニア連合共和国との間で、円借款「農業・農村開発ツーステップローン計画」(供与限度額227億円4,200万円)に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • 国際協力機構(JICA)は、エジプト政府との間で、「民間セクター開発及び経済多角化支援のための開発政策借款」における円借款貸付契約に調印しました(記事)。
  • JICAは、バングラデシュ政府との間で、技術協力プロジェクト「先進技術を活用した森林管理による沿岸レジリエンス強化プロジェクト」に関する討議議事録に署名しました(記事)。
  • JICAは、2024 年11 月にカンボジアで行われた、対人地雷禁止条約第5 回検討会議に参加し、「カンボジアとの協力によるアフリカにおける地雷対策のための能力強化」についてのサイドイベントや、カンボジアの地雷対策を更に発展していくための新たな技術協力プロジェクトに関する合意文書に署名を行いました(記事)。
  • 外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。
  • 開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。

┏━━━━━━━━━━━┓

– バイ・ドナー関連 –

┗━━━━━━━━━━━┛

  • 英国は、英国の成長と安全保障を推進するため、英国ソフトパワー評議会を立ち上げました(記事)。
  • 欧州連合(EU)は、アンゴラとのパートナーシップを強化し、同国東部からコンゴ民主共和国南部とザンビア北部をつなぐロビト回廊への投資を強化します(記事)。
  • GIZは、ケニアでの活動50周年を記念し、同国での活動をHPで紹介しています(記事)。
  • 米国ミレニアム・チャレンジ・コーポレーション(MCC)は、アルバニアをパートナーシップに選出しました(記事)。
  • カナダ政府はシリアに対するカナダのコミットメントを再確認し、緊急のニーズに対応するため、1,725万ドルの資金提供を発表しました(記事)。

┏━━━━━━━━━━━┓

– 国際機関関連 –

┗━━━━━━━━━━━┛

  • 経済協力開発機構(OECD)は、環境変化に対応するための教育、人的資源開発の重要性について言及した新報告書”Empowered Citizens, Informed Consumers and Skilled Workers”を発表しました(記事)。
  • 国際通貨基金(IMF)は、「世界経済見通し改訂版」を発表しました(記事)。
  • 世界銀行は、パキスタンに対する「国別パートナーシップ枠組み2025-2035」を発表しました(記事)。
  • アフリカ開発銀行は、セネガルのエネルギー向上支援を目的とした851万ユーロのプロジェクトをローンチしました(記事)。
  • 米州開発銀行は、ラテンアメリカ及びカリブ海地域の貿易に関する新報告書”Trade Trends Estimates for Latin America and the Caribbean”を発表しました(記事)。
  • UNICEFは、ギャングによる暴力が蔓延するハイチで、子供の8人に1人が国内避難民になっていると報告しています(記事)。
  • UNHCRは、コンゴ民主共和国東部で紛争が激化し、今年に入ってから既に23万人が避難を余儀なくされたと報告しています(記事)。
  • ILOは、最新の雇用情勢について分析したWorld Employment and Social Outlook2025を出版しました(記事)。
  • WHOは、医療分野の緊急支援に対応するために15億ドルのアピールを発表しました(記事)。
  • 国連経済社会局はWorld Economic Situation and Prospects2025を出版し、世界の経済成長率は新型コロナ前以下の水準にとどまる見込みだと報告しています(記事)。
  • WMOは、2024年は歴史上最も暑い年になったと報告しています(記事)。
  • UNICEFは、Prospects for Children in 2025を出版しました(記事)。
  • 国連は、イスラエルの侵攻を受けたレバノンの支援のために3714万ドルのアピールを発表しました(記事)。

┏━━━━━━━━━━━┓

– シンクタンク・NGO関連 –

┗━━━━━━━━━━━┛

  • Save the Childrenは、地震に見舞われたバヌアツで少なくとも12500人の子供が新学期に学校に行けなくなっていると報告しています(記事)。
  • Save the Childrenは、ガザでは毎日15人の子供が爆発物により障害を負っていると報告しています(記事)。
  • 英ODIは、途上国の債務問題について新たな法律を制定して対応すべきとする報告書を発表しました(記事)。
  • 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)は、気候変動分野での英中協力についての報告書を発表しました(記事)。
  • 英NGOネットワークBondは、国際開発における運営リスクと財務リスクをテーマにしたワークショップを開催しました。活動している国が制裁対象となったら、あるいは現地に銀行がない場合などの状況でのヒントをHPで紹介しています(記事)。
  • 英サセックス大学IDSは、1月28日に、ブラジル、中国、インド、インドネシア、南アフリカの5カ国を中心に今後の開発トレンドを展望するイベントを開催します。イベントはオンラインで視聴可能です(記事)。
  • 世界経済フォーラムは、ダボス会議を開催しています(記事)。
  • JETROは、2月12日に国際シンポジウム「アフリカはいま:未来を担う若い大陸のチャンスとチャレンジ」を開催します(記事)。
  • アジア財団は、太平洋地域全体で気候変動対策を推進する女性を表彰し、他の気候変動リーダーと結びつける10日間のフェローシップ・プログラム「太平洋女性気候リーダーズ」の第2期生を選出しました(記事)。

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

ワシントンDC開発フォーラム「情報サービス(dev-info)」と

「メーリングリスト(devforum)」

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

ワシントンDC開発フォーラムでは、本フォーラムの開催する勉強会等のイベント関連情報 (案内・レジュメ・議事録)をはじめとする活動情報に加え、グローバルな途上国の開発関連情報と日本の取り組みに関する最新の情報を、「DC開発フォーラム 情報サービスメールマガジンDev-info」として、電子メールにて隔週で配信しています。

[バックナンバー]

2002年7月以降の全てのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。

[メール配信登録]

本情報サービスの配信をご希望の方は、こちらからご登録ください。

[記事掲載依頼]

本情報サービスへの記事掲載をご希望の方は、こちらまでご相談ください。

[登録解除]

本サービスの登録解除をご希望の方はこちらに空メールを送り解除いただきますようお願い致します。

[情報交換メーリングリスト]

本フォーラムでは、毎回のBBLについての意見交換の他、より広くグローバルな開発戦略と日本の関わりに関する 意見交換や情報交換を行うために、「ワシントンDC開発フォーラム・メーリングリスト(devforum)」を運営しています。参加をご希望の方は、こちらのフォームより参加申請を行ってください。

[DC開発フォーラム全般に関するお問い合わせ]

登録に際するエラーや、dev-infoやdevforumをはじめ、DC開発フォーラムの活動についてご質問・ご意見等ございましたら、お気軽にこちらまでご連絡いただけますと幸いです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

編集担当:小林隼人/荘所真理/畠山勝太/伊藤千春/石野瑠花/浅海誠/砂原遵平

発行:ワシントンDC開発フォーラム

DC開発フォーラムHP: http://www.devforum.jp/

Facebookページ:    http://on.fb.me/rtR9Le

twitterアカウント: @DC_dev_forum

2025年1月21日発行