【dev-info】2025年3月18日号(資金カットがUNICEF、WFP、WHO等の支援先に影響 他​)

2025年3月18日発行

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ワシントンDC開発フォーラム・情報サービス

-(dev-info)-

皆様の同僚・知人への転送大歓迎いたします。

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【1】ワシントンDC開発フォーラム便り

「ボスニア・ヘルツェゴビナから考える国家」表将幸(経済協力開発機構・パリ在住)

 

【2】ワシントンDC開発フォーラム新着情報チェック

国際協力機構(JICA)は、エジプト・アラブ共和国政府との間で、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)「農業廃棄物を活用したプラスチック代替素材製造に基づくサーキュラーエコノミーの構築」に関する討議議事録に署名しました(記事

英国は、アサド政権後のシリアの復興と安定を支援するため、最大1億6,000万ポンドの支援を行います(記事

グティエレス国連事務総長は、国連改革を優先させることについて言及しました(記事

英NGOネットワークBONDは、英国のODA予算削減による悪影響を抑える方法について提言しています(記事)他

 

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【1】 ワシントンDC開発フォーラム便り

 

タイトル:ボスニア・ヘルツェゴビナから考える国家

執筆:表将幸(経済協力開発機構・パリ在住)

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2月末にボスニア・ヘルツェゴビナ(以下BiH)のスルプスカ共和国の首都バーニャ・ルカに行ってきました。BiHは2つの国から構成された連邦国家ですが、その二つの構成体は直感的に想像される「ボスニア」と「ヘルツェゴビナ」ではなく、「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」と「スルプスカ(セルビア人)共和国」です。(「ボスニア」と「ヘルツェゴビナ」はBiHの地方・地理的名称で、日本でいう「東北」、「関東」、「近畿」等の概念に近い)

1990年代のユーゴスラビア解体紛争の過程で、BiHにおけるボシャナク系(オスマン帝国時代にイスラム教に改宗した南スラブ人)、セルビア系、クロアチア系の間でボスニア紛争が勃発したことはご存知かと思います。セルビア系による「サラエボ包囲」や「スレブレニツァの虐殺」、クロアチア系による「モスタル砲撃」など、欧州において戦後最悪となった紛争を終結させた1995年のデイトン和平合意後、ボシャナク系とクロアチア系が主体の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」が全国土の51%、セルビア系の「スルプスカ共和国」が全国土の49%を占めています。BiH及び「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」の首都はサラエボ、スルプスカ共和国の首都はバーニャ・ルカです。サラエボは「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」と「スルプスカ共和国」で分割されており、「見えない国境」があることでも有名です。(スルプスカ共和国の名目上の首都は「東サラエボ」です。)

BiH全体の民族別人口比はボシャナク系が50%、セルビア系が30%、クロアチア系15%、その他が5%ですが、バーニャ・ルカの人口の約90%はセルビア系、残り10%がボシャナク系、クロアチア系、ユダヤ系等となっています。現在も「ミニ・ユーゴスラビア」と呼ばれるBiHだけに、バーニャ・ルカにも(主にセルビア系が信仰する)正教会、(主にクロアチア系が信仰する)カトリック教会、(主にボシャナク系が信仰する)イスラム教のモスク、そしてシナゴーグもあり、人口20万弱の都市の中に多民族・多宗教の共存を垣間見ることができます。

しかし、ここにきて、BiHはデイトン和平合意以来最大の試練に直面しています。スルプスカ共和国のドディク大統領は、ロシアの大統領と友好関係にあり、スルプスカ共和国のBiHからの離脱及びその後のセルビアとの統合を強く支持しています。これは今年で締結から30年を迎えるデイトン合意を根本から覆すもので、2月末にはデイトン合意及び国連上級代表(デイトン合意履行を監視する国連の最高責任者)であるクリスティアン・シュミット氏の意向を無視したとしてドディクは有罪判決を受け、3月13日時点ではシュミット氏を起訴する意向すらも示しています。今後の控訴結果によってはBiH及びバルカン半島の政情をさらに不安定化させる懸念が出ており、BBCなどの国際ニュースでも広く報道されています。シュミット氏は2月の来日時に東京大学でBiHの政治危機に関する講演も行ったようです。

BiHについて考えていると、「国家とは何なのか」という複雑なお題について深く考えさせられます。パレスチナ問題、アルバニア人が多数派でセルビアから独立したコソボ、国家を持っていない最大の民族であるクルド人問題。BiH はこれらを考える上でとても興味深い国だと思っています。

少し真面目な話題になりましたが、観光的な話をすると、BiHはバルカン諸国の中でもトルコ (オスマン帝国)の影響が特に強いためか、バルカン風ケバブであるチェバピがかなり美味しいと有名です。実際サラエボとバーニャ・ルカのが有名で、バーニャ・ルカでは4個のチェバピが切られずに長方形の形状で出てくる独特のものでとても美味しかったです(しかも安い!)。また、観光案内所に行ったら、対応してくれたセルビア系の方がJICAのスタディツアーで日本に行ったこともある親日の方で、他に誰も観光客が来ないことも手伝って、気づいたら40分くらい雑談をしてもらっていました。

以上、政情が再び不安定になってきたBiHですが、1日も早い正常化を願うとともに、いつか何らかの形でより深く関わることができればいいなと思いました。

 

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【2】 開発フォーラム新着情報チェック

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┌――┐Dev-Info 新着情報チェックでは掲載情報を

|\/│募集しています。情報掲載を希望する場合は、

└――┘devinfo.mailmagazine@gmail.com までご連絡ください

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– 日本関連 –

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  • 国連開発計画(UNDP)フィリピン事務所代表との間で、4.54億円を限度とする無償資金協力「バンサモロ地域における地域社会の経済開発及び生計に係る取組を通じた人間の安全保障の推進計画(UNDP連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • タンザニア連合共和国財務省次官との間で、無償資金協力「母子保健サービス強化のための医療機材整備計画」(供与限度額15.27億円)に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • リベリア共和国国際協力・経済統合担当外務副大臣との間で、供与限度額27.25億円の無償資金協力「ジャパン・フリーウェイ延伸計画」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • 国連児童基金(UNICEF)パレスチナ事務所特別代表との間で、供与額6.00億円の無償資金協力「脆弱な子供及び女性の保健・栄養サービスへのアクセス改善計画(UNICEF連携)」に関する書簡の署名・交換が行われました(記事)。
  • 国際協力機構(JICA)は、エジプト・アラブ共和国政府との間で、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)「農業廃棄物を活用したプラスチック代替素材製造に基づくサーキュラーエコノミーの構築」に関する討議議事録に署名しました(記事)。
  • 外務省は、「2024年版開発協力白書 日本の国際協力」を公表しました(記事)。
  • 外務省は、各種分野の任期付き職員、非常勤職員を募集しています(記事)。
  • 開発に関する人材募集情報がPartnerページに掲載されています(記事)。

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– バイ・ドナー関連 –

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  • 英国は、アサド政権後のシリアの復興と安定を支援するため、最大1億6,000万ポンドの支援を行います(記事)。
  • 英政府系開発金融機関BIIは、ガーナ・インターナショナル・バンクと共同で、シエラレオネ、リベリア、ガンビア、ベナン、コンゴ民主共和国、ルワンダ、タンザニアを対象とする5,000万ドルの貿易金融ファシリティを発表しました(記事)。
  • AFDは、ケニア、セネガル、コンゴ民主共和国およびコートジボワールで、開発協力に対する調査を実施しました。開発協力はおおむね好意的に受け入れられている一方で、汚職や資金の不正利用などのリスクや、援助が最も必要とされる人に届いていないなどの声も挙がっています(記事)。
  • スウェーデン国際開発協力庁(Sida)は、2024年の年次報告書を発表しました(記事)。
  • 第3回EU-CLASI閣僚会合が開催され、EUとラテンアメリカの安全保障協力の強化に向けた共同宣言とロードマップが採択されました(記事)。
  • カナダ政府は、バングラデシュおよびインド太平洋地域の開発プロジェクトに2億7210万ドルの資金援助を行うことを発表しました(記事)。
  • 豪州はシンガポールとの間で、グリーン経済に関する共通指標の開発を推進しています(記事)。

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– 国際機関関連 –

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  • 欧州復興開発銀行は、若手専門職員育成を目的としたInternational Professionals Programme(IPP)の応募を受け付けています。2025年は、銀行部門(本部)、銀行部門(地域事務所)、ファイナンス部門、IT部門、リスク部門、政策・パートナーシップ部門、人事・組織開発部門での採用が予定されています。締切は3月23日です(記事)。
  • OECDは、コスタリカの経済状況を分析した”OECD Economic Survey of Costa Rica”を発表しました(記事)。
  • IMF80周年を記念した国際シンポジウム「戦後80年に考えるこれからの国際協調のあり方」が日本で開催されました(記事)。
  • 世界銀行は、ギニアビサウの人的資本レビューを行った報告書を発表しました(記事)。
  • 世界銀行は、アルバニアの公共サービス向上、デジタル化支援を目的とした8000万ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。
  • アフリカ開発銀行は、エリトリアのエネルギーセクター、ミニグリッド導入支援を目的とした1950万ドルのプロジェクトを承認しました(記事)。
  • UNICEFは、資金カットによりロヒンギャの難民キャンプで深刻な栄養不良に陥る子供が27%増加していると報告しています(記事)。
  • WFPは、資金カットにより6億2千万ドルの資金不足に陥っており、サヘル中央部・ナイジェリアを中心に食糧不足が発生していると報告しています(記事)。
  • CERFは、資金が集まっていない9か国の緊急支援に対して1億1千万ドルの資金拠出を行いました(記事)。
  • WHOは、資金カットにより結核対策に支障をきたしていると報告しています(記事)。
  • OHCHRは、中央アフリカで武装集団によりイスラム教徒が迫害されていると報告しています(記事)。
  • WFPは、ソマリアで必要な資金の12%程度しか集まっておらず、深刻な飢餓に陥る人口が100万人増加するだろうと予想しています(記事)。
  • UNCTADは、昨年の貿易高は3.7%上昇したが、今年の後半は関税の行方次第で不透明であると分析した年次報告書を出版しました(記事)。
  • UN Womenは、ジェンダー平等を達成するための行動アジェンダを発表しました(記事)。
  • グティエレス国連事務総長は、国連改革を優先させることについて言及しました(記事)。

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– シンクタンク・NGO関連 –

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  • 英ODIは、中低所得国における包括的で持続可能な経済変革についての報告書を発表しました(記事)。
  • 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の専門家が、アサド政権後のシリアの展望について解説しています(記事)。
  • 英サセックス大学IDSの専門家が、米国や英国のODA予算削減の影響についてコメントしています(記事記事)。
  • 英NGOネットワークBONDは、英国のODA予算削減による悪影響を抑える方法について提言しています(記事)。
  • 世界経済フォーラムは、世界の持続可能な航空燃料(SAF)需要は2030年までに年間1,700万トンに達するが、これを達成するために必要な設備投資は、190億ドルから450億ドルになると発表しています(記事)。
  • Center for Global Developmentは、米国の援助によって救われた命について、被援助国の推計を例示しながら、世界各国の推計について纏めたブログ記事を公表しています(記事)。
  • アジア財団はフィリピンにおける責任あるAIについて政府と民間セクターを招集 し会合を行いました(記事)。
  • JETROアジア経済研究所は、インドネシア・ビジネス協議会(IBC)と研究交流に関するMOUを締結しました(記事)。
  • RIETIは、EBPMセンター常勤職員(政策分析専門官)の公募のお知らせを公表しました(記事)。
  • 『グローバル エデュケーション モニタリング レポート 2024/5 教育におけるリーダーシップ』概要日本語版ローンチウェビナーが4/9に開催されます(記事)。
  • Oxfamは、イスラエルの違法植民地で働くパレスチナの女性たちの状況を分析した報告書を出版しました(記事)。
  • Save the Childrenは、資金カットにより障害児支援に支障が出ていると報告しています(記事)。

 

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2025年3月18日発行