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第220回DC開発フォーラムBBL 2011年11月16日
「IFCによるBOP向け“インクルーシブ・ビジネス”への取り組みと事例」
プレゼンテーター
増岡俊哉
(IFCインクルーシブ・ビジネス・モデル局長)
インクルーシブ・ビジネスとは
>2004年に出版されたC. K. プラハラードの著書『The Fortune at the Bottom of the Pyramid』により、経営者層が経済ピラミッドの下層部 (BOP) に注目するようになる。2007年にはIFCとWRIがBOPの市場規模を測定
>BOPをバリューチェーンに組み込むための支援が各界から行われるようになる→インクルーシブ・ビジネス・モデルの提言へ
>インクルーシブ・ビジネスは従来のCSRと異なり、補助金に頼らずに、企業の本業としてビジネスを行って利益を生み出し、規模を拡大できる事業モデルである
>インクルーシブ・ビジネス・モデルは持続可能な経済成長への貢献と、貧困層の自立・収入機会・サービスへのアクセスの向上を両立するものである
インクルーシブ・ビジネスにおけるIFCの役割
>IFCは2004年以来、200から250の案件で約60億ドルの投融資を行ってきた。2010年度ではIFC投融資総額の7%を占める規模に成長
>インクルーシブ・ビジネスは40%がIDA向けで、中所得国が多いことと関連するが国別案件数ではラテンアメリカが全体の約半分を占める。また、プロジェクトの内訳を見るとインフラ案件が最も多い
>社会起業家による事業は小規模で採算点に乗りづらいが、インクルーシブ・ビジネス・モデルは支援対象も幅広い上に開発効果の規模も大きい
>インクルーシブ・ビジネス案件は他のIFC投融資案件に引けをとらない投資リターンをもたらし、同時に高い開発効果を生み出している。(経済・財務・民間セクター開発効果の面で他のIFC案件の平均よりも高く、環境・社会面でも同様の効果を実現)。これは最貧国での案件でも同様
>インクルーシブ・ビジネスは、①低コスト②流通網の構築③BOPおよび事業運営者のキャパシティビルディング④マイクロクレジットなどで金融へのアクセスを確保する事が肝要
>IFCの案件から抽出されたインクルーシブ・ビジネスを7つのモデルに類型化し、インクルーシブ・ビジネスの横展開を支援
インクルーシブ・ビジネスの成功例①(Jain Irrigation)
>類型的にはSmallholder Procurementに該当する
>世界的に水の使用効率を上げる事が求められているが、インドでは特に農業セクターでの水の効率的な使用が求められている
>灌漑設備の販売業者は、そもそも農家が灌漑設備を使いこなせないと業者のビジネスも成り立たないため、農家のキャパシティビルディングをしつつ、低コストの灌漑設備を融資と共に提供した
インクルーシブ・ビジネスの成功例②(マニラ・ウォーター)
>水道会社の民営化に際して、コミュニティの組織化・自営化のキャパシティビルディングを行い活用することで低コスト化を図る
>地域社会が自発的に料金支払いの連帯責任を担うことで当事者意識が高まり、MWCは水道料金の回収率を改善し、水道料金を安価なままに抑え、利益を生み出している
インクルーシブ・ビジネスの成功例③(DIALOG)
>Dialogはスリランカの大手モバイル通信サービスプロバイダー
>4万以上の独立小売業者を活用し、農村部の住民に対象顧客範囲を広げ国内市場シェアは49%を達成。電気通信アクセスへの拡大に加え同社の商品を販売する零細・小規模小売業者の経済機会も拡大
7つのモデルにはないが弊社の顧客Husk Power Systemはインドの未電化地帯でバイオ・マスを用いた地域分散型ミニグリッド事業を展開しており、今後はスマートグリッド構築、廃熱を利用した蒸留水の供給、遠隔地のテレコムパワーやインフラへの低廉な電力供給などを視野に入れている。
質疑応答
Q.BOPに対する日本での反応はどうか?また、BOPに関して日本に求めるものは何か?
A.2009年が日本でのBOP元年と言われていて、CSRからのアプローチも行われている。日本の途上国向けのビジネスは、BOP層の上のボリュームゾーンの消費力に着目し、この層へアプローチする消費型のビジネスモデルが多く、如何に低コストでビジネスを行うかを中心に考えられているようだ。大企業の投融資をIFCと共同で行うものもあるが、進出意欲のある中小企業を如何に引き出せるかが今後の課題だと考えられる。
Q.投資先はビジネス的にどの段階のものが多いのか?
A.発展途上国の地場企業が大半であるが、投資規模は平均すると1200万ドル程度であるがその分散は大きい。投資先の殆どは、ごく一部のインフラ案件を除いて損益分岐点に届いているか、または届くかどうかという段階にあるもの。基本的にBOP案件であってもIFCの通常の投資審査を行っており、これに通ったものに投融資を実施していることから初期段階のものには投資できていない。初期段階のものは財団系によるグラント更にはインパクト・インベストメント等での支援が行われている。
Q.海外でインクルーシブビジネスを行う場合、どのような条件が必要となるか?
A.現地化するということが重要。地元企業は、現地へのコミットメントも高いし、社会のニーズも的確に把握することができる。よって、外国から進出してくる場合には、適切なパートナーとしての地元企業選びが必要となってくる。
Q.IFCのインクルーシブ・ビジネス局には金額・プロジェクト件数の目標はあるか?
A.現在は具体的目標を設定していないが、将来的にはIFC内で現在の倍のシェアぐらいになることを目指している。
Q.日本の事例ががインクルーシブ・ビジネス・モデルとして注目されるケースはあるか?
A.日本語の記事で話題になることはあるが、英語で情報が発信されていないために日本国内で留まっていることが多い。
Q.ある国での成功例を他国に適用する際の課題は何か?
A.そもそも国ごとに大きく事情が異なっているのである国での成功事例をそのまま他国へ適用することは基本的に難しい。しかし、IFCではこれまでの経験や知見の共有や、インクルーシブ・ビジネス・モデルを分析・類型・文書化し、異なるセクターにまたがる類似の特徴や課題を明らかにしている。また、普及・啓蒙のイベントを開催することで顧客企業や主要ドナー間での情報交換の促進を図り、更に優れた成果をあげるためのイノベーションの創出を後押ししている。
作成:畠山勝太