第10回(2012/2/7)紛争・脆弱国における援助の効率性

ワシントンDC開発フォーラムでは2月7日(火)に、第10回ワークショップを世界銀行の会議室で開催し、約30名が参加しました。今回は、世界銀行の業務政策局(Operation Policy and Country Service)のシニアエコノミストとしてご活躍されている石原陽一郎さんをスピーカーとして迎えました。
RIMG0664.jpg
まず石原さんから援助の効率性のコンセプトについて説明がありました。実務上、援助の効率性は、援助のデリバリーとマネージメントと定義されています。国際社会では、2005年の「パリ宣言」、2008年のガーナにおける「アクラ行動規範」、2011年の韓国釜山での「釜山パートナーシップドキュメント」などの会議を経る中で、議論の焦点も大きく変化してきました。当初は援助自体に焦点が当たっていましたが、援助効果がより重要な課題となりました。援助協調もフレームワークも、ドナー間での調和(Donor Harmonization)から途上国自身がイニシアチブをとるAid Coordination、パートナーシップと変化しています。
RIMG0669.jpg
次に石原さんから紛争・脆弱国における援助の効率性について説明がありました。非紛争・脆弱国と比較すると、紛争・脆弱国では援助の依存率が高い一方、援助の効率性が低いことが認められます。この理由としては、紛争・脆弱国のリーダーシップが弱いためオーナーシップを発揮しづらいこと、コーディネーション能力の欠如、汚職の蔓延、脆弱な統計があげられます。また、ドナー側も援助を行う際に危機回避的な行動を取っているケースがあります。
最後に、世界銀行の援助効率性に対する取り組みが説明されました。世銀のビジネスモデルは、現地レベルで途上国のプライオリティに沿った援助の実施であり、現地の経験や知識が組織改革に活かされ、グローバルレベルでリーダーシップを発揮するベースになっています。世銀の援助効率性は、2005年と比較で大きく改善されています。現在は、パートナーシップの拡充、途上国自身がオーナーシップ・リーダーシップを発揮するためのサポート強化を続けています。
RIMG0656.jpg
質疑応答では、援助効率性の議論の方向性、紛争・脆弱国支援における課題、紛争・脆弱国の定義、などについて議論が交わされました。ワークショップ終了後には会場で懇親会を開催しました。懇親会には約20名が参加し、活発な意見交換や議論が交わされました。