2014年11月6日(木)、西永知史氏(外務省国際協力局国別開発協力第三課長)をお迎えして「開発協力大綱の策定及びTICADについて」のテーマで第245回BBLが開催されました。
【テーマ】 「開発協力大綱の策定及びTICADについて」
国際社会の開発に関する議論の変化やODAに求められる役割の多様化を踏まえ、現在日本政府は2014年内の政府開発援助(ODA)大綱の改訂作業に取り組んでいます。また、中国や米国等がアフリカへのアプローチを強める中、これまで日本政府がリードしてきたアフリカ開発イニシアティブ「TICAD」は、今後どのように展開していくのでしょうか?ODA大綱(新名称は「開発協力大綱」?)そしてTICADの今後について、西永氏にお話をうかがいました。
【プレゼンター略歴】 西永知史氏(外務省国際協力局国別開発協力第三課長)
1992年外務省入省
在エジプト日本国大使館勤務を経て,本省でアジア局,中東アフリカ局,国際協力局で勤務。
2008年から在米日本国大使館一等書記官及び参事官,在イラク日本国大使館公使参事官,総合外交政策局宇宙室長兼安全保障政策課国際安全保障担当交渉官を経て, 2014年1月より国際協力局国別開発協力第三課長。
【プレゼンテーション】
配布された資料は下記リンクをご覧下さい。
資料4:TICADⅤ 2013年:我が国主要支援策の進捗状況(ファクトシート)
開発協力大綱(案)
<ODA大綱の歴史と今回の改定>
ODA大綱は1992年に策定された。1992年は冷戦や湾岸戦争が終わり、日本が世界一のODA供与国だった時であり、日本のODA政策の考え方を内外に示すために策定された。
その後2003年に改訂され、これが現大綱となっている。2003年はODA改革が国会など国内で強く求められており、ODA改革の集大成として策定された。2001年に9.11、アフガン・イラク戦争が起こったこともあり、現大綱は「平和構築」及び「人間の安全保障」を盛り込んだことが大きな特徴。また、「ODAは世界のためだけでなく、日本のためにもなる」、という趣旨で「我が国の安全の確保」を言及した。(新聞では「国益」について明言したものとして報道された)
現在、新しいODA大綱(「開発協力大綱」に改名予定)整備の最終段階であり、11月27日まで幅広く意見を募集しており、2014年12月に改訂予定。
また、今回の改定を機に、政府としては名称を「ODA大綱」→「開発協力大綱」(案)に変更したいと考えている。名称変更の趣旨としては、開発というのは政府だけがやっているわけではなく、民間企業、地方自治体、NGOなどの役割も大きく、また、政府及び政府関係機関によるOOFなどODA以外の資金・活動もある。これらとの連携を強化することが、開発の相乗効果を高める上で重要という認識より。また、ODA(政府開発援助)の「援助」につき、途上国はパートナーであるという認識で「開発“協力”」としたとの考えもある。
<新大綱(案)>
以下、開発協力大綱(案)に沿って説明がなされた。
I 理念
(1)開発協力の目的
「国益」という言葉を明言した。また、国益とは、「我が国の平和と安全の維持、更なる繁栄の実現、安定性及び透明性が高く見通しがつきやすい国際環境の実現、普遍的価値に基づく国際秩序の維持・擁護」と定義。この国益の定義は昨年末に閣議決定された国家安全保障戦略にならったもの。
(2)基本方針
ODA60周年を振り返り、以下3点を盛り込んだ。
ア 非軍事的協力による平和と繁栄への貢献
平和国家としての道を歩んできた日本にもっともふさわし国際貢献の一つ。
イ 人間の安全保障の推進 脆弱な人々に特に焦点を当てる
ウ 自助努力支援と日本の経験と知見を踏まえた対話・協働による自律的発展に向けた協力
オーナーシップを重視する。日本の経済経験、日本の技術的知見を活かす。「要請主義」に徹することなく、日本からも積極的に提案を行うことを含めた対話・協働を重視。
II 重点政策
(1)重点課題
ア「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅
包摂性、持続性、強靭性を重視
イ 普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現
今回の改定の特色の一つであり、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の促進につき記載(平和構築支援に加えて、民主化支援やガバナンス向上を記載)
ウ 地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靭な国際社会の構築(気候変動対策、感染症対策、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ推進、防災対策・災害復旧対応等)
(2)地域別重点方針
現実問題として,我が国のODAがアジアのみを重視しているということはなく,アジアを重点地域とするとの書き方を改めた。
III 実施
(1)実施上の原則
ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則
イ 開発協力の適正性確保のための原則
これまでのODA4原則を整理し、7つの原則を打ち出す。
- 民主化の定着、法の支配及び基本的人権の保障にかかる状況
現行のODA大綱4原則にある
- 軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避
「民政目的、災害救助等非軍事的目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」というのは、マスコミ方面からは軍事目的の道を開くものと報道されているが、実際にはそうではない。あくまで意図としては、相手国の軍又は軍籍を有する者が民政目的や災害救助等非軍事目的の活動に関与している実態を捉えたもの。
(ウ)軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発製造、武器の輸出入等の状況
現行のODA大綱4原則にある。
(エ)開発に伴う環境・気候変動への影響
現行のODA大綱4原則にある
(オ)公正性の確保・社会的弱者への配慮
今回新たに加えたもの
(カ)不正腐敗の防止
今回新たに加えたもの
(キ)開発協力関係者の安全配慮
今回新たに加えたもの
(2)実施体制
ア 政府・実施機関の実施体制整備
イ 連携の強化
民間企業を始め連携強化を強く打ち出したのが今回の特色。「官民連携、自治体連絡との連携」、「緊急人道支援、国際平和協力における連携」、「国際機関、地域機関との連携」、「他ドナー・新興国等との連携」、「市民社会との連携」
ウ 実施基盤の強化
ODAの量を対国民総所得比で0.7%(現行は0.2~0.3%)とするとの国際的目標を念頭におく,とされているのが新しい点。
TICAD
昨年TICAD Vが日本で開催された。また、今年5月にカメルーンで開催されたTICAD V閣僚会合においては、TICAD Vでの表明内容の進捗確認が行われた。
- TICADVの主な支援策
官民連携でアフリカ協力に取り組む。
・民間の貿易投資を促進し、アフリカの成長を後押しする
・量的には、今後5年間で対アフリカ向けのODA約1.4兆円の実施を含む最大約3.2兆円の官民の取組でアフリカの成長を支援
具体的な支援策は、
- 経済成長促進(民間セクター、貿易投資、資源)
- インフラ整備・能力強化の促進(5大成長回廊整備支援などのインフラ整備、人材育成、科学技術、観光)
- 農業従事者を成長の主人公に(農業、食料・栄養安全保障)
- 持続可能かる強靭な成長の促進(環境、気候変動・防災)
- 万人が成長の恩恵を受ける成長の促進(教育・ジェンダー、保健、水・衛生)
- 平和と安定、民主主義、グッドガバナンスの定着
- これまでのTICADはすべて5年ごとに日本で開催されていたが、次回のTICAD VIはアフリカで開催したい旨アフリカ諸国より要請があり,先般の国連総会で安倍総理より次回のTICADVIは2016年にアフリカが開催することを表明した。具体的なホスト国とタイミングは未定。
以上