ドナー調整会合 − 日本のよりよき開発協力支援のために

DC Development Forum

 

 

ODA Reform Lunch

 

 

DC Development Forum

2002.3.4. ODA 改革 BBL 

泉   泰 雄

                 ドナー調整会合
                 − 日本のよりよき開発協力支援のために

開発・経済協力に携わる世銀現場よりの視点
欧州・中央アフリカ局での経験から

2002.3.4. 
泉  泰雄  

タイトル

本    文

注・備考

1.今回の視点

 

  • 開発・協力支援体制を現場から見る

  • ECAと言う観点から、

  • 産業金融面での協力支援という視点から
     

ECA :
Europe and Central Asia
旧ソ連・東欧各国およびトルコを担当

2.ドナーの活動

 

  • 開発・協力につき、各国は当然独自の政策実施

  • また国際機関への出資を通じた、またトラスト・ファンドを通じた、開発・協力も実施。
     

 

3.調整の必要性

 

  • 各国とも支援の実効を挙げることを目的に独自路線も継続しつつ、他のドナーとの調整も盛ん

  • 対象分野、実施時期、相手国のキャパシティなどを見つつ柔軟な対応へ − 重複・実施のタイミング等

  • 世銀のCASも各ドナーにとっても、ひとつのベンチマークに
     

 

4.世銀 CAS プロセス

政策決定過程での調整

  • CAS - Country Assistance Strategy は引き続き、各国向けの世銀のプログラム策定の基本文書

  • CASのプロセスは、よりオープンになり、幅広いステークホールダーの意見・意向を反映。

  • 世銀担当部局も主要ドナー機関・各国の動向・意向には注視、必要に応じ調整も実施
     

 

5.世銀の立場の変化

ドナーとの協調の一層の必要性

 

  • 世銀も近年の予算の削減・スタッフの減少などを背景に、単独で開発支援をリードという立場を見直し

  • 支援の実効を挙げるためにも、世銀も、他の機関・各国との協調の必要性を一層認識
     

 

6.ドナー調整会合

実施中プログラム調整

  • 主として現地ベースで、国によって状況は異なるが、年に2回程度から、2週間に1度といった具合に活発なところも

  • 意思決定機関ではなく、連絡そして、それなりの調整機能も

  • ドナー各国・各機関の各プログラム・プロジェクトの進行状況を相互に報告

  • 関連しあう内容を実施している機関同士の調整にも事実上機能 (特に実施タイミング)
     

 

7.ドナー調整会合

新規プログラム調整

 

  • また、実施課程にあるもののみならず、新規政策・プログラムについても、議論されることもあり

  • 加えて、世銀CASプロセスでのボトムアップベースで行われることも
     

 

8.ドナー調整会合

受入国政府代表

 

  • さらに、ケースによっては受入国の代表が参加することもあり、受入国政府・関係者からの声を直接聞くケースも

  • 同時に、プログラム実施にあたっての技術的問題点の解明、政府スタッフのキャパシティ・ビルディングに利用されることも
     

 

9.ドナー調整会合

 −ECAのケース
     参加者


 

  • ドナー調整会合への参加者は もちろん国により、場合により、相違するが、一般的には

    • 世銀(所長以下テクニカルスタッフ全員、また出張中のスタッフ、コンサルタントも参加することもあり)

    • USAID (大使館からも、内容により)

    • EU (TACIS)

    • EBRD

    • その他各国 (UK・オランダ・スウェーデン・スイス)代表 − DFIT GTZ KfW など

    • および各国の支援プログラムで契約しているコンサルタントの一部

    • NGO

    といったところ、さらに ケースによっては、

    • 現地政府代表 (関連省庁)

    • 世銀 Program PIU/PMU 代表、も
       

 

10.ドナー調整会合

 −ECAのケース
     調整の実際 1

 

  • ケース 1 − 中小企業支援
    中小企業支援は、ECA諸国でポピュラーな産業・金融支援プログラムのひとつ。各国・各機関とも注力分野

    • USAID − インキュベータ設置、同TA

    • EU − 地方開発プログラムとして各地域にビジネスセンター設置運営

    • UK/DFID − 経営コンサルタントを派遣。中小企業局嘱託として個別経営指導

    • 世銀 − 工業規格・製品検査・輸出振興政策などの政策実施
       

 

11.ドナー調整会合

 −ECAのケース
     調整の実際 2

 

  • ケース 2 − 金融セクター支援

    • USAID − 送金・振替システム構築、資本市場整備

    • EU − 金融サービス法制整備 EU Acuquis調整

    • UKなど各国 − 個別投資案件フォロー

    • 世銀 − 不良債権問題処理、担保物権法等法令・環境整備
       

 

12.見えない日本の存在

現地大使館の方針

 

  • 調整会合には、欠席

  • 現地大使に照会するも、日程上不可能、大使館スタッフの能力を理由に不参加との由

  • また、現地大使館以外の日本の支援機関のドナー調整会合出席には、極めて消極的

  • 現地大使に確認をとっても、各国政府とのバイラテラルな議論・交渉に主眼

  • 世銀とは個別に現地オフィスとは接触あるものの、ドナー調整会合には関心薄い

  • 基本的には、本省からの指示待ちというのが大部分
     

 

13.見えない日本の存在

ドナー・コミュニティからみて


 

  • 日本は最大のドナー国にもかかわらず、姿がみえない不思議

  • 世銀経由のみならず、各種プログラムを実施しているにもかかわらず、現地ドナーとの協議のない不思議

  • ECAのケースがとくに、その可能性があるが、実施している支援には、人道的なものが多く、産業・金融支援は対象外という不思議 

  • 日本の経済発展の良さをなぜ、産業・経営・金融面で支援しないのかという不思議
     

 

14.今後を展望して

日本のより積極的なかみこみ

 

  • ドナー調整会合は、インフォーマルな形での協議機関

  • 現地ベースでのドナー・コミュニティの動向を理解するには、かなり有効な組織

  • 同時に、日本の政策の方向を、コミュニティに示すにあたり、インフォーマルに協議し、また他の機関との調整にも活用できる格好の機会

  • 大使館のみならず、日本の支援機関にとっても技術的分野での協議・調整のためのよい機会
     

 

15.見える日本へ

支援・援助の最終成果だけでなく、政策検討段階から


  

  • 前出のごとく、世銀のCAS議論は支援プログラムを包括的に議論する、よい機会 (今後はPRSPも)
    CAS/PRSP への早い段階からの日本の政策表明・協力・コメントを

  • 早い段階からの関与を、PHRD等トラスト・ファンド、人的支援(スタッフ問題)等にも、幅広く活用を

  • ドナー調整会合への積極的な関与により、現地ドナー・コミュニティでの、日本からの支援内容の重さに見合う認識・信用を確立へ

  • 他のドナー諸機関との現地ベースでの情報収集を本省サイドでの支援・協力政策立案に、各国間調整にも活用し、より効果のある政策実施へ。

 

 

 

以上