2002年12月13日BBL概要 |
日系社会支援のあり方を考える −アマゾン最前線からの報告− |
12月13日、ワシントンDC開発フォーラム「日系社会支援の在り方を考える−アマゾン最前線からの報告ー」というテーマにて、JICA日系社会シニアボランティアとしてブラジルで活動されている住田育子氏にご参加頂いて、約10人で自由な意見交換をしました。 本セッションでの住田さんからの報告及びその後に参加者から出された意見等のポイントは次のとおりです。 1 ブラジルのトメヤスの移住地は、濃密な日系人社会の典型であるが、世代の交代、日系人に対する周囲の潜在的な差別意識や反感、伯の歴史的階級構造等の中で翻弄されている。 2 胡椒などの商品作物のプランテーションに賭けるにはリスクが高すぎ、多方面の有識者が推奨するアグロフォレストリーのみでは生活ができず、また、広大な森林を焼き払って牧畜を営むことには持続可能性がない、等々、行き場のない中で、日系社会の人々は、子弟の教育に未来をかけるべく、その資金を稼ぐために出稼ぎにいっているが、その結果、しばしば家族の崩壊を招いている。これからの日系社会を考えるとき、出稼ぎによる家庭の崩壊を回避するためにも地元で良質の教育が受けられるか否か、が大きな岐路となる。 3 欧米の移住者から構成される社会との比較において、日系人を含むアジア人の社会が、比較的内向き志向であることも気になる。日系人社会が、伯においてしかるべく生き残っていくためには、これまで以上に、周辺社会への貢献に意を用いることが重要。 4(伯国の中にあるという現実を考えるとき、そもそも日本語の教育やその他の日系人支援などはナンセンスともいう議論があるがとの指摘に対し)言葉で言えば、外国語ならまず英語、次にスペイン語、という感覚は日系人にも当然ある。また、日系人支援が、他者による日系人に対する反発を招く直接間接の原因になっていたかもしれない、という点もある。他方、僅かなりとも子弟を日本文化に触れさせたい、という強い希望を持つ日系人が依然として沢山居るのも事実。また、単純に英語学習のみに専念させるよりも、例えば、日英+ポル語というトライリンガルな教育を通じて、子どもたちの知性、就中言葉に対する鋭い感性を磨くことができるとも考えられる。 最後に住田さんからフォーラム参加者に対しては、開発に関心の有る方は、是非種々の機会を捉えて、途上国の社会、人々の生活の場に直接接することから物事を考えて欲しい、とのメッセージがあったことを申し添えます。 なお、本セッションでも若干議論になりましたが、そもそも「日系人支援」というかたちの支援をいつまでつづけるべきなのか、という論点、あるいは、「開発援助の ために日系人社会を活用する」などという修辞が開発援助関係の文書などで頻出しているが、実際にそのようなことは望ましいのか、可能なのか、という論点、さらに、日本語教育支援などは、結果的には日本への出稼ぎとその後の家庭崩壊などを招くリスクが大きく、功罪ともに考えると、敢えて積極的に推進すべきではないのではないか、という意見などを含め、info@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。 |