2003年3月3日BBL概要

日本の国際教育協力の課題を考え る
−グローバルな取り組みとの連携を中心に−


3月3日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「日本の国際教育協力の課題を考え る−グローバルな取り組みとの連携を中心に−」が、約10名の出席を得て行わ れました。

冒頭、外務省経済協力局調査計画課課長補佐の横林直樹氏よりプレゼンテー ションがあり、その後の出席者間の議論で様々な意見が出されました。

冒頭プレゼンテーション及び出席者からの意見のうち、主要なものは次の通り です(順不同)。

(1)途上国での教育の改善に向けて、近時、ダカール行動枠組み、国連ミレ ニアム開発目標(MDGs)、G8教育タスクフォース、そして世銀ファスト・ト ラック・イニシアティブ(FTI)等、様々な国際的取り組みが進められてい る。

(2)このような国際的な潮流の中で、わが国の教育支援の内容についても見 直す必要がある。教育支援では、施設建設、職業訓練、留学生受け入れが多 く、無償資金協力のほとんどは施設建設、技術協力の半分近くが留学生受け入 れである。また、基礎教育支援では、無償・有償資金協力ともはほどんどは学 校建設であり、支援全体の8割を占めている。確かに学校建設はどのドナーも できるというものではないが、今問われているのは、学校を建てても学校に行 けない理由があるなど、就学を妨げている要因に如何に対処するかという課題 である。インフラだけでないソフトの手当てをしないと途上国の問題を解決で きない。このような課題に日本がどのように応えていくのかを真剣に考える必 要がある。

(3)日本の教育支援の今後の課題としては、次のものが挙げられる。
(イ)学校建設のコスト引き下げ(日本は2−3万ドル、世銀は約8千ドル)
(ロ)リカレント・コストへの支援(生徒・教師のインセンティブを高める効 果あり)
(ハ)アフリカへの支援(教員の養成、教育の質の向上とともに就学を妨げる 要因への対処が急務)

(4)エイズの影響は深刻である。教育関連でも、教師がエイズになるので先 生を養成する必要がある。何らかの対処を考える必要がある。

(5)日本による学校建設のコスト高の要因は、日本のコンサルタントやゼネ コンの経費が高く、日本の会社の調達・行政コストが含まれるからだと思う。 現地での削減努力はしているが、それを削減しても限りがあり、本社の利益に 切り込まないと削減は難しい。しかし、そこまでできるかはやってみないとわ からない。(日本の建設した学校等は質が高く、単純なコスト比較は出来ない との意見あり。)

(6)もはや援助額の右肩上がりの時代は終わっており、日本としてイニシア ティブを打ち出すときも、インプット目標(金額)ではなくアウトプット目標 (結果)で考えるべきではないか。過去の実績等から推定すれば、アウトプッ ト目標を設定することもそれほど困難ではない。

(7)日本では教育支援の必要性に対する理解があり、ユネスコ協会、ユニセ フ協会などはかなり多額の資金を集めている。このような民間の資金を何とか 効率的に利用できないか。(この関連で、ユネスコでは寺小屋プロジェクト等 が進められている旨紹介あり。)

(8)日本にも教育開発に関する専門的な知識を持った人がいると思うが、今 までは学校建設が主だったため、そのような人が活躍し発言する機会が少な かった。今後リカレントコスト支援、アフリカ支援が増えると、必要とされる 教育専門家が変わると思う。そのような知見をどのように集めて、またこれか ら専門を持とうとする人のキャリアパスをどのように作り、ODAに反映させる のかが課題である。(この関連で、JICA内の教育ネットワークについて紹介あ り。)

(9)日本の中での人材育成のために、大学院で修士を持った人に実務経験を 積ませることが大事だと思う。例えば、ゼミの先生のもとで、学生にJICAプロ ジェクトに参加させることも一案である。

(10)日本の援助関係者には、世界の流れをキャッチしようとするインセン ティブがないのではないか。例えば、世銀の報告書を読んでおかしいと思った 場合に、問題意識を持って発信する人が必要ではないかと思う。

(11)教育に限らず、最近の援助の流れは貧困削減戦略文書(PRSP)プロセ スやセクター別支援(農業・環境・保健・教育など)を中心とするようになっ ている。そのような分野別の質の高い援助戦略を従来は作ってきていなかっ た。教育分野での日本のイニシアティブ(BEGIN)も更に質を高くする必要が ある。今後、分野別の政策・戦略を明確化しつつ、着実に推進していくこと が、援助の世界で効果を上げて信頼を得ていく唯一の方法である。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

Top