2003623BBL概要

日本のNGOの現状と課題


623日、ワシントンDC開発フォーラムBBL「日本のNGOの現状と課題」が約25名の出席を得て行われました。
  
冒頭に今田克司氏(CSO連絡会事業開発オフィサー)および黒田かをり氏(CSO連絡会シニアコンサルタント)より、NGOを取り巻く環境の変化と、NGOが抱える課題について、問題提起がなされました。その後、日本のNGOが国際開発トレンドと連動した活動をするには?国内地域問題をいかに国際問題と結び付けて活動できるか?「ODAデモクラシー」の推進アクターとしてのNGOの役割は?ガバナンス問題、市民に支えられるNGOとは?など、多様な切り口から活発な議論がなされました。

概要は次の通りです。

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1.冒頭プレゼンテーション(今田克司氏・黒田かをり氏)

(1)日本のNGOを取り巻く環境

法的環境整備
 199812月NPO法制定。現在1万以上の団体がNPO法人格取得。更に200110月、寄付の税制控除を受けられる認定NPO法人制度 ができたが、条件が厳しく取得できた団体は12団体のみ。
資金源の変化
 90年代以降、寄付・会費収入の大幅減の反面、政府のNGO支援額が拡大。省庁案件実施が随意契約による委託から競争入札に変化し、NGOも競争入札の参加が可能に。
●NGOと政府との対話促進
 外務省、財務省、JICA、JBICとの定期協議。外務省とは政策協議も。
キャパシティ・ビルディング
 政府側からの意向で開始。プロジェクト実施強化が主。
国内基盤強化への取り組み
 国内の寄付市場強化の動きが拡大。現状は国内サポートが弱い。

(2)日本のNGOが抱える課題 

政府とNGOの関係
 NGOは政府系資金中心の財政運営が可能になった反面、NGOとしての独立・自立性をどう保つかが課題。
財政と組織基盤の強化
 一般寄付は運営一般を支える資金として重要。しかし、開発NGOは国内に裨益者がおらず活動が見えにくいため、集めにくい。 
国内地域社会と国際社会との結びつき
 市民に支えられるNGOになるには、国内地域が抱える課題と国際課題を結びつけ、市民の理解を得る必要がある。
キャパシティ・ビルディング
 政府主催プログラム過多。参加要件が厳しく、それを満たすNGOが限定。
人材確保
 プロフェッショナルな人材や、英米で開発学を勉強した若者の就職の受け皿になるために、いかに財政基盤を作り、また魅力的になるか。
アカウンタビリティと正当性
 NGOは企業に対し社会・環境的側面からアカウンタビリティと正当性を迫る一方、欧米ではNGOのアカウンタビリティに対する議論がおこっている。この点については、政府・企業など組織全般の重要な課題として議論すべき。

2.席上の意見交換

(1)国際的な開発トレンドが日本のNGOに浸透しないのはなぜ?
 
開発分野の世界的なトレンドは英米のラインが強いが、あまり関わらずに来たため、日本のNGOが世界的なトレンドと距離があるのが理由の1つ。

(2)日本のNGOは最初から海外前提の活動に対し、欧米NGOは自分のコミュニティから開始し、国内基盤がある気がする。欧米と対等に競争するための足腰強化を考えると国内地域の議論があるのでは?

地域と国際社会を結びつける話は必然的。しかし実際には、分野や地域を超えて人が交わり、情報や問題点の共有を図るのは難しい。

(3)日本のNGOの使命としてサービスのデリバリーがあるが、真に期待されるのは「ODAデモクラシー」の充実。NGOはコンサルの代わりになることでなく、市民参加の下で活動して初めて付加価値がある。その際、「ガバナンス」「アカウンタビリティ」が問われる。

(4)日本のNGOの足腰強化に関する具体策は?

NGOのキャパ・ビルが花盛りだが、あまり促成栽培ばかりしようとしてもよくない。育て方というより育ち方が問題で、日本の市民に支えられる形で日本のNGOが育っていく必要あり。

以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。

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