2003年8月20日BBL概要

国際紛争地域と経済開発効果:
関係測定のための代替的燃える作成の試み


8月20日、コ−ネル大学ホテル経営大学院博士過程の原忠之氏をお迎えし、BBL「国際紛争地域と経済開発効果:関係測定のための代替的燃える作成の試み」が約15名の出席を得て行われました。 同BBLでは冒頭原氏が観光産業、テロの経済影響の定量化、中東問題などについてのプレゼンを行い、それに基づき闊達な議論が行われました。その主なポイントは次のとおりです。

[冒頭プレゼン]

1: 観光産業について

観光産業は、アメリカで$350billion、世界では$3.2 trillionの産業であるのに過小評価されている。その理由として次が考えられる。

(1)様々な産業が含まれていて、スタディし難い。
(2)先進国と途上国では、観光産業に対するperceptionギャップがある。(OECDでは全体の28%、途上国では43%、LDCだと70%が観光産業のシェア。先進国ではあまりピンとこないので過小評価しがち。)

観光産業は資本の流れが一般の輸出産業と比べ違う。一般の輸出産業はものがアメリカなどの先進国に流れ、資本は途上国に入る。観光は外貨を稼ぐということにおいては一緒だが金の流れがちがい、人と金が同じ方向に流れる。又、自由貿易に合致していながらロビーストの反対を受けない。さらに、観光産業は資本を持つ人だけゲームに参加できるという参入障壁が非常に低い。観光産業は仕事を作るのに非常に効果が高く、LDCにとっては頼りがいのある産業。

2:テロリズム、テロの経済影響について。

テロの特徴:予期できずに突然おきる、外的なショックが大きい、定量化するのはとても難しい、ケースはたくさんあるが、Studyされてない。 多くの国が観光産業に依存しているなか、観光は、変動、紛争やテロのダメージを受けやすい。

9・11テロ事件後、テロによるマイナス経済効果の定量化に皆が興味を持ちだした。産業連関(I−O)モデルを使うと、テロがあった場合の、他の様々な産業セクターでの変動を測定できる。テロ事件直後の失業者数を初期ショックと見なし、そのショックが一年間でどのような結果を生み出すかをシミュレーションした。その結果、当初予測した数字(11billionくらいの損失)と実際のデータがかなり近いことが判明。

又、このモデル応用すれば、ある一定の予算を違った政策(学校設備、病院、イラク戦争、観光産業への投資)に使うと、それぞれどのような経済効果、州政府への利益がうまれるかなどを比較できる。また、紛争を続けるが、やめるかによって、どういう経済効果があるのかという様な比較分析も可能。問題は、このモデルをつくるのがかなり大変であるということ。

3:イスラエル・パレスチナ問題への応用。

このモデルを中東問題に応用し、中東テロがその地域の人々の所得、雇用、各産業などに与える影響についてシュミレーションをすることができる。

(1)イスラエル・パレスチナ問題の統計的背景

(イ)1967年のボーダー中にユダヤ人440万人、パレスチナ人120万人。Occupied Territoryにはユダヤ人39万人、パレスチナ人360万人。ということは、イスラエル、OccupiedTerritory を融合してしまうと、ユダヤ人マジョリティーではなくなり、民主主義の選挙を行う現在の政権が崩れる可能性が高いというインプリケーションがある。

(ロ)経済格差が非常に大きい(所得=$19000(イスラエル):$1000(西岸):$625(ガザ)、Occupied Territoryでの失業率の高さも問題である(50%)。

(2)観光産業のテロ抑止効果

イスラエル・パレスチナ問題にはいろいろな側面があるが、地域の人々から見てエルサレム問題が一番重要だという調査結果に達した。イスラエルとパレスチナが主権を放棄して1キロ平方を国際機関に譲与すれば、観光産業へのプラス経済効果が大きい。新たな雇用が1万から20万ほど出る見込みで、仕事を得た人々は、テロ行為をするインセンティブがなくなるだろうと過程すると、30%程のテロ減少と予測できる。しかし、これを正確に測定、実証するには、IOモデルを完成する必要がある。

【質疑応答・意見交換】

(1)観光産業のテロ抑止効果について。

観光産業が盛んになれば、テロは本当に減るのか。観光地が発展すれば、逆にテロの効果性をあげ、テロの的をつくってしまうのではないか。 地元に支えられたテロなら観光産業を盛んにすることによって、テロ抑止につながるのかもしれないが、地元に支えられていないテロ(9・11)には効果がないのでは?

->テロがあると観光産業が落ちる。逆はああまり議論されていない。ルクソールでは、観光業に携わっている上流階級の人が地元のテロ組織を追い出すということがあった。

ダメージコントロールの観点より、どういう経済構造の国がテロに強くてどこがそうでないかを考慮するとき、テロという外的ショックにたいして脆弱なのは観光産業に依存している国である。脆弱ではない開発の仕方を考えるべき。

(2)産業連関(IO)モデルについて。

テロには国際的なスピルオーバーが伴うが、これを産業連関表のIOモデルで計るには限界があるのでは。

->地域を特定すればよいが、地域が三つ以上になると限界がある。外的ショックが起こった瞬間に、その影響を測るのは難しいことである。

何がRelevantかを明らかにし、それがどうInter−relateしているかということに集約するべき。アジア金融危機のあとで、なにが経済に起こったのかで様々な試みがなされたが、モデルが全部破綻し、結局のところは金融セクターにどう波及したのか、それが民間セクターにどうなったのか、それが雇用にどう影響したのかというようにして調べた。

-> CGモデルをつかうとIOモデルのほかに、失業者の数とか金利を変数にいれることができる。(CG:一般均衡モデル)

各国ごとのインターナルロジックをみて、そこから相関をみて政策を立てていくべき。

(3)研究の応用について。

失業と紛争の接点については研究されている。紛争は人数が必要なので、途上国の若者に仕事をあたえないと紛争を含むいろいろな問題につながる。しかし、テロは人数が必要でなく、ごく一文の人達だけでできる。なら、雇用とテロは統計的にリンクしにくい。

テロだけではなく、観光産業と開発の関係についての研究を進めてほしい。軍基地がもたらす沖縄への経済影響などに結び付けられるのではないか。

(4) テロリズムと経済について。

テロといっても種類がある。反政府的なテロがあったり、大半はイスラエル・パレスチナの状況が原因でテロになっている。感情的、宗教的、政府的な理由がある。この三つを解決しない限りは経済的な話はできないのではないか。

->モデルで定量化できないので宗教的なところというのは無視していまっている状況。

->日本の中東平和にむけての役割としては、パレスチナの観光産業に投資すべき。軍隊や船を送るのもいいが、資本を観光業に投入したり、旅行者を送ったりするほうが効果的。

これらの点に関わらず、様々な方向から、議論を継続していきたいと思いますので、皆様も感想、意見などをinfo@developmentforum.orgまで投稿していただければ幸いです。

(紛争と開発ネットワーク フォーカルポイント 嶋影)

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