2月12日、安積発也氏をお招きして、「21世紀に於ける日本の国際開発コンサルタントの役割世銀・アジ銀・UNDP・コンサルタント30余年の経験から」のテーマのもと、本フォーラムBBLが開催されました。 当日のプレゼンテーション概略は以下の通りです。
・安積氏略歴
国際基督教大学(ICU)卒業後、1962年に日立製作所入社、米国預託証券という新証券を米国で発行しようということになり、その際の米国公認会計士の監査を受けるために通訳などを手掛ける。そこで、国際的な勉強が足りないということに気付き、休職して私費留学。留学を終えたときに国連のサマーインターンに応募したところ合格し、そのまま引き続き務めることを進められて面接受験、合格。1966年に正式に国連開発計画へ転職。NY本部、カイロ、ジュバを経て、1975年から世界銀行ワシントン本部に勤務、最初の2年は出向というかたちでビルマ・アンブレラ計画に従事。
その後、世界銀行の正式職員となり、1986年まで技術協力コーディネーター、プロジェクトエコノミストなどとして勤務。1987年からはマニラのアジア開発銀行に勤め、協調融資やプログラム援助に携わる。1992年に再び世界銀行ワシントン本部へと戻りEDI(現在のWDI)の天然資源環境マネージャーになる。1998年まで勤務。1998年に、ワシントンDCにて自ら開発コンサルタント会社を設立し現在に至る。自身の歩んできた道がパラダイムシフトの連続だったといえる。
・コンサルタントとは、顧客(クライアント)のニーズを把握し、それを満たす為に、知識・経験・未来予想能力を提供する専門または専門家集団。
・日本の国際コンサルタントが過去20年に犯した戦略ミスとしては:
(1)余りに高いODA依存:現在でも、受注先の内訳 は、国際機関から1.8%、民間から6%、残りの92%は全てJICAかJBICなどODA)
(2)バブル時代の国内業務偏向、海外プロマネ養成の遅れ:バブル時代に国内の好景気時に、国内事業をどんどん引き受けた。プロジェクトで一番大切なのはタスクリーダーだが、これは実績が必要であり一朝一夕養成できるものではない。彼らの大切な修行時代を国内作業にもっていかれてしまい、本当は海外の仕事をしたかった人材は辞めていった。現在の多くの日本コンサルタント企業は、若い人材とシニアな人材とで二極化してしまっていて、中堅層が不足している。
(3)海外業務の恒常的赤字を直す抜本的改革を怠った
(4)ハードからソフトへの転換乗り遅れ、などが考えられる。
・現在日本の国際コンサルタントが直面する問題点としては:
(1)ODA予算の大幅減少(現在はODA予算が年間10%で年々削減されている。
(2)国内需要も減少
(3)日本コンサルタントにとって不得意な分野である海外需要の急激なソフト化(今はまたインフラ回 帰しているが、ソフトはまだまだ重要)などが挙げられる。
・今までの日本の開発援助の在り方の問題点としては、
(1)省庁縦割り
(2)要請主義
(3)政府と民間コンサルタントが対等に話し合いにくい
(4)成果評価能力不足
(5)真のクライアントを見失ってしまうこと、など。
・政府への提言として:
- 国際舞台でのもっと積極的な発言
- 発疹する情報の積極的発掘と整理
- 国際開発省の設立
- 国際競争力を養う教育
- JICA・JBICの人員枠の拡大
次に、JICA・JBICへの提言として:
- 成果品で勝負(評価能力の強化
- 官民の上下関係改善
- 省庁縦割りを出来にくくする内部機構の改革
- 国別計画だけではなく、セクター別計画も
- 真のクライアントは誰なのか、MDGの議論も踏まえた再検討
- パートナーシップとコミュニケーション野強化
- コンサルタントに対する規制緩和 が、提言されました。
・また、国際コンサルタントへの提言としてまずは、
ODA依存を改める徹底的リストラのために:
- 固定給からで出来高制度への転換
- 過去のしがらみから来る種の歳出廃止
- 出来高制度実施に欠かせぬ勤務評定の改善
- 国内・海外事業バランスの見直し
- 企業合併(現10社のうち3社が生き残ればよいほう)
同時に、国際競争力の強化のために:
- コミュニケーション能力の強化
- 外国コンサルタント企業との提携
- 中途採用による人材確保
- 社内研修の強化
- 女性の専門家の積極的採用・訓練
などに代表される、「パラダイム・シフト」が提言されました。(以上)
以上の諸点をはじめ、日本として取り組むべき課題や、議論を聞いての感想など、短いものでも結構ですのでinfo@developmentforum.orgまでご意見をいただければ幸いです。
(BBL担当 江尻) |