DFID Report/DFID通信

第1回 2004年度国際開発省(DFID)年次報告書の概要

2004年度国際開発省(DFID)年次報告書「DFID Departmental Report 2004」(日英援助協調にも言及)が刊行されましたので、概要をお知らせします。また、報告書全文がDFIDのホームページ(www.dfid.gov.uk)に掲載されています。なお、PSA(Public Service Agreement)は英の主要官庁が財務省ひいては納税者に対して約束した公約のようなものですが、MDGs達成や国際システム等が中心になっているところがDFIDらしいといえばらしいのでしょうか。

以下概要です。

(1)冒頭のベン大臣の前言において、MDGsの多くの分野で目標到達がまだ程遠いことを強調し、貧困削減のためにもっと資金を提供し、最も効果的な方法で援助を行わなければいけないとし、HIV/AIDS対策、紛争解決、国際機関や他のドナーとの協力の重要性に言及している。また英国の援助予算は2005/06年度までに45億ポンドとし、国連の目標であるGNIの0.7%達成を目指すとしている。アフリカ国際委員会の設立、アフガニスタンとイラク等にも触れている。

(2)Chapter1ではDFIDの役割と責務としてMDGsからモンテレー合意、WTO等の国際的な動きを説明し、ドナーの調和化、MDGsの達成のためには世界の援助資金を500億米ドルから1000億米ドルへ倍増する必要があることを述べ、先進国側が約束を守ると共に、途上国政府とのパートナーシップによりMDGsの達成を目指すとしている。

(3)Chapter2〜6でDFIDの現行のPSA(2003/04年度から〜2005/06年度)の遂行状況を中心に報告している。概要は次のとおり。なお、PSAの達成目標とその指標、現在の達成状況のレビューはAnnexe3にまとめられている。

(イ) アフリカ
PSAの達成目標1は「重点国16カ国(タンザニア、ケニア、モザンビーク、ルワンダ、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア、コンゴー(民)、ザンビア、ウガンダ、マラウィ、ジンバブエ、シエラ・レオーネ、スーダン、スワジランド、南ア)でのMDGs達成。」MDGsの達成は援助の量と有効性にかかっている。アフリカ地域の発展を妨げているものはHIV/AIDS、ガバナンス、脆弱な保健サービス、貿易障壁等である。DFIDの二国間援助のうち48%(2002/03年度)はサブ・サハラ・アフリカ向けであり、2005/06年度までには同地域の二国間援助を10億ポンドにまで増大させる。2004年2月よりアフリカ国際委員会を発足させた。

(ロ) アジア
PSAの達成目標2は「重点国4カ国(中国、バンクラディシュ、インド、パキスタン)でのMDGs達成」。アジア地域でのMDGs達成は一部の国で見込まれるが、難しい国もある。発展を妨げているのは(富の)不均衡と差別、HIV/AIDS、脆弱なガバナンス等である。最貧困層への援助の増加を重点としつつ、途上国政府とより密接に協力しあっていくことにより発展をはかる。ベトナムと中国に新しい事務所を開設した。中国において2400万人の子どもに教育を提供するため、世銀と協力して1億米ドルのローンを行った。インドの経済成長やベトナムでのインフラ整備等において日本と密接に協力して支援を行っていく。

(ハ) ヨーロッパ、中東、アメリカ
英国はイラクに対し、2006年3月までに合計で5億4400万ポンドの人道援助及び復興支援を行うことをプレッジした。パレスチナの和平実現のため、1500万ポンドを追加支援することとした。

(ニ) 国際機関、他のドナー等との協調
PSAの達成目標3は「国際的なシステムの有効性の向上をはかる」ことである。英国の援助の約4分の1はECを通じて行われるため、ECプログラムがより貧困対策を重視し、効率を高めるように働きかけている。また、他ドナーとの二国間協力の例としては、2003年4月に東京においてDFIDのアジア地域事務所の年次会合を日本政府及びJICAの職員の参加を得て行い、その成果として今後とも日英の密接な協力関係を築くこととし、特にベトナム、バングラデシュ等で協力して援助を進めることとなった。また、英国はMDGs達成のために不足する500億米ドルのギャップを埋めるために国際金融ファシリティー(IFF)を国際社会に提案した。PSAの達成目標4は英貿易産業省及び外務省との共同目標で「途上国の貿易の機会を向上させるため貿易障壁の削減についての合意を2005年まで確保する」ことである。カンクンでのWTO交渉の失敗したものの、途上国側の声も高まっており、引き続き努力を続けていく。

(ホ) 政策局の改組
DFIDでは政策局の組織を刷新し、研究・分析能力を高めることにより、政策形成機能を強化した。新しい政策局には25の分野別政策チーム(Aid Effectiveness、Agriculture、 HIV/AIDS、Education等)と1つの中核チームをおいている。

(4)Chapter7ではDFIDの組織とマネジメントについて説明している。PSAの達成目標5は「DFIDの二国間援助の90%を最貧国に集中させること」であり、2002/03年度ではこれが80%であったが、2005/06年度までには90%を達成するとしている。なお、2003/04年度のDFIDの支出総額は「Conflict Prevention Pools」(外務省、国防省との共管)等の支出も含め概算で39億4900万ポンドであった。

2004年5月6日

(石橋幸子)

【関連資料】
英国国際開発省(DFID)研修報告(2004年1月19日−2月13日)
(プレゼンテーション 1
外務省経済協力局調査計画課
横林 直樹

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