本号は、以前にご紹介した2月1−2日にDACで行われた非OECDドナーとの会合、「Forum
on Partnership for More Effective Development Co-operation」に関するご報告です。今回は、個人の所感も含め、いつもとは違った書き方をしてみました。。。
●●なぜこのフォーラムを?
ことの始まりはあるDACの統計書を見た某DAC代表の発言。「(世界で唯一だと誇る)DAC統計資料には、『DACメンバーは世界全体の95%のODA額を拠出している』と書いてあるが、これは本当か!?中国、インド、アラブ諸国による援助額を入れたらその算出の母数ははるかに大きくなると思われるので、この主張は正しくないかもしれない!」。要はDACが頭に描く「ドナーの全体像(そして自分達はそれの中心を占めるという考え!?)」なるものは完璧ではないというちょっとした自信のぐらつき。。。
その後、調和化の議論を行うにしても、債務帳消しの話をするにしても「新興ドナー」なるもの存在を無視していては、DACが持つ「ドナーの全体像」は完璧になりえない、という認識が共有されるようになった。調和化に関しては、せっかくDACドナーが現地で手続きの調和化を行っていてもその外でインドが別の手続きで被援助国政府のTransaction
costを高める結果をもたらしていたら意味がない!債務帳消しについても然り!と。そして、DACの取組を新興ドナーにも共有してもらう、少なくとも可能な分野から協力を模索するための情報チャネルを構築する、ということを目的に会合を開こう、という声が盛り上がった。
しかしながら、そのターゲットとなる「新興ドナー」としては、DACのやっている活動に関するお説教をもらうためだけにパリに来ることにはならないだろう、という警戒があってかなくてか、DAC側としては、新興ドナーの持つ途上国としての経験、ある程度の開発をなしとげた中心国の経験の両者の視点をDACドナーに共有してほしい、というメッセージも含めたアジェンダ設定になった。
●●参加者は?
ターゲットなった新興ドナーは、主に中国、タイ、台湾、マレーシア、ブラジル、チリ、ロシア、イスラエル、サウジアラビア、チュニジア等々。各国とも、援助機関の局長等かなりのハイレベルが参加した。
一方、DAC側の参加者は。。。一回目の会議ということもあり、半分がパリのDAC代表になった。これは何を示しているのか?
●●会合の主なアウトプットは?そして著者の勝手な所感
- 会合は、DACドナー・新興ドナーが共通に取り組むべき目標としてMDGs等の開発目標に関する議論からスタート。その後、(1)これを達成するためには、新興ドナーの活動(リソース、ノウハウ)も重要で歓迎されるべし、(2)特に、目標達成のためには援助効果向上が不可欠で、DACのこれまでの経験を、新興ドナーと共有したい、DACは新興ドナーの経験についても学びたい、という流れになった。
- 具体的には、(2)に関しては、調和化・アライメント、援助マネジメント手法、統計の整備、に関する分科会での議論が行われた。新興ドナー側は、自らの援助機関等の整備をおこなっていくなか、DACメンバーの多種多様な援助マネジメント制度に高い関心を持っていた。調和化については、アラブ基金より「アラブ諸国のドナーは相当前から手続きの調和化を行っていた」等の発言があったが、その他のドナーにはまだ新しい話。いずれにしても可能な被援助国の現場での実施が重要、との認識が共有された。統計については、ともすると「あなたたちのやっていることはとても怪しい。だから統計をDACに提出して透明性を高めなさい!」と聞こえかねない。更に、統計整備の前提となる、「どういった活動をODAとして報告していいのか」というODA適格性の問題は、更にセンシティブ。「うちの国は○○ドルの援助をしている」なんてえらそうにいっていたある国の活動の実態をみると、例えば平和維持活動と称して純粋な軍事活動に使われ、開発とは無縁、すなわちDACではODAではみなされていない、ということも考えられる。その予感は、今回の会合では統計方法に関する深い議論をおこなっていない現時点ではわからないが、例えば自国のODAはGNI比で4%としていたサウジアラビア(以前は8%だったとのこと)。疑うつもりはありませんが、DACとの統計の話により、少なくとも何がどうなったらこんなに高いODA額の拠出になるのか、詳細が明らかにされることは確か。
- (3)については南南協力、またそれを支援する三角協力の分科会で議論が行われた。これは、日本人セッション!?といわれるか心配になるほど日本人が活躍したセッションでした(UNDPも、チリも日本人が関連)。いずれにしても、日本はUNDPとともに本件に熱心だということ。特に強調されたのは、コスト面、援助プロジェクト実施面での比較優位性(同様の言語、文化、社会、開発状況の国による技術移転の効率性の高さ)。本件はプレナリーでも相当広い賛同を得て、議長サマリーでもその重要性が認識された。日本としては、ひとまず成功!といえるのでしょうが、本件の効果、課題の整理についてはこれから更に取組が必要で、今後更に南南協力の効果を発揮するため戦略・手法等の議論が必要と考えられる(外務省の委託調査が主な報告書。
- 会合のアウトプットとして出された議長サマリーをみるとわかるとおり、今回は、「新興ドナーの活動の重要性を認知し、今後も対話を続けていきましょう」、「統計等は具体的な協力ができるかもしれません」、「フィールドでの協力が重要です」。。。。という、あまり具体的なアクションをもとめる結論までには到達していない。今回は実質近年始めてのDACと新興ドナーの会合であったこと、DAC側のリソースの問題等が背景に考えられますが、早急にフォローアップを行うのが重要と思われる。
- DACの「ドナーの全体像」はいつ完璧なものになるのだろうか。参加していたタイ、チリ等の国々がマージンで「我々はドナーではないのでそうは呼ばないでョ!」といいはっていたけれど(もちろん笑顔で。。。)、DACと具体的にどう協力するのか(どういうステータスでどのように?何の分野で?)という課題はまだ具体的には解かれていない。
(パリDAC通信担当 寺門雅代)
|