From Paris/パリDAC通信第33号 |
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今回は、先日簡単なご報告を差し上げたパリ援助効果ハイレベルフォーラム(HLF:2月28日〜3月2日)に関し、その成果であるパリ宣言と我が国の対応につきご紹介します(青文字部分は著者の所感・コメント等)。
1. パリ宣言
(3)パリ宣言の起草過程における最大の争点は、「指標」に付する達成数値目標の設定方法でした。イギリス、オランダ、ノルウェー等のEU諸国、世銀ウォルフェンソン総裁、一部パートナー国より本HLFにおいて数値目標を決定し、行動計画に具体性をもたせるべき」と主張、ノルウェー、EUからは、「数値目標を設定できる国(注 EUでは独自に数値目標を合意していた)は、数値目標を設定し、その旨パリ宣言に記すべき」としました。一方、アメリカ、日本等は、各指標について、現在どのような状況かというベースラインが分からない中、達成すべき数値目標を設定するのは論理的でない等の理由から、妥協案として、ベースラインが不明な指標については今後早急に調査・検討を行い、国連「ミレニアム+5」会合の行われる9月までに決定すべきとし、最終的にはそのラインでパリ宣言が採択されることになりました。一方、EUの各国独自の努力をパリ宣言に反映させるべき、という主張に関しては、パラ9の「独自の努力は歓迎されるべき」とされ、各国は自主的に今後独自の努力を発表し、まとめて公表されることになりました。 (→ 達成すべき数値目標の設定が今回行えなかった理由としては、純粋に準備・交渉の時間が足りなかったことが挙げられると思います。その制限下でも、積極的に数値を設定すべしとしたイギリス、ノルウェー等のEU諸国の主張は、自身の努力への自信の現れなのでしょうか。確かに、EUは事前に数値目標を合意しており、積極的な努力があったといえるでしょう。一方、アメリカ、日本、(準備段階ではドイツ、カナダも含む)等が「ベースライン無しでの数値設定は非論理的」といったのは、単なる数値コミットメントを回避する口実といえるのでしょうか。。。「日本人」としての立場でものを言えば、「時間が無い中、無理やり、何でもいいから数値をいれろという主張はあまりに乱暴(一部の発言者は、「そんなことはMDGsだって同じ!」と開き直る始末。)。やはり現状をしっかりと把握して科学的に物事を進めるのが、本当の援助効果を達成するための正攻法。」という「まじめな、慎重な立場」が背景にあるものと考えられます。要は、「論拠に基づいた約束をしたい、そしてそのように約した事項はがんばって守る」日本人(その他の国は不明)と「とりあえず努力目標的な数値だけ入れて、努力をうながすことが重要」とするヨーロッパの一部の人々の性格(制度)の差といえるのでしょうか。いずれにしても各国の「本音」は今後の議論で見えてくるはず。個人的には、「ウソのない」「本当に途上国の現場にとって必要な援助効果向上のアジェンダがうまく進むようなインセンティブになるような」目標が設定されるようにと願っています。) 2.我が国の対応 (2)また、我が国は、パリ宣言のモニタリングは、定量的指標(quantitative indicators)と定性的指標(qualitative
indicators)の2つをバランス良く組み合わせるべき、モニタリングは、既存の枠組み(ドナー支援国会合や被援助国・ドナーが参加する現地ベースのワーキンググループ等)を最大限活用すべき、との主張を行いました。今後の具体的な議論で右が確保されるよう積極的なインプットを行う次第です。 (3)パリ宣言の採択を、我が国の援助の効果向上に向けた改革につなげるため、パリHLFでは「行動計画」を独自に発表し、宣言に対する我が国のコミットメントを示しました。本計画は、在外公館の現状、声を吸い上げとりまとめたもので、援助効果向上においては、(イ)オーナーシップは、援助効果向上を図る上での出発点、(ロ)同時に、パートナー国政府・他ドナーとのパートナーシップが重要、(ハ)適切な能力開発が伴わなければならない、(ニ)途上国の開発政策との整合性(アラインメント)を確保する、(ホ)パートナー国の各種制度(含む、公共財政管理)の改善に向けた努力を支援する、(ヘ)わが国の実施体制のより一層の強化が重要、との認識の上、これらに必要な取組みを約しているものです(近日中に外務省のHPにて閲覧可能になる予定)。 (パリDAC通信担当 寺門)
2005年3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム」
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