From Paris/パリDAC通信第34号 |
2005年4月18日 |
今回は、前号でご紹介したパリ援助効果ハイレベルフォーラム(HLF:2月28日〜3月2日)でも議論になった能力開発についてです。
1.背景とHLFでの能力開発の位置付け (1)開発支援における「能力開発(Capacity Development)」の重要性に関しては、従来よりドナー等で議論(http://www.capacitywhoiswho.net/)がなされており、DACではGOVNET(ガバナンスネットワーク)において作業を行ってきましたが、ネットワークのマンデートから、開発に不可欠となる良い統治を実現するために必要な能力開発にスコープを絞ったものにとどまっていました。 (2)しかしながら、援助効果向上に関する議論を行うDACの援助効果作業部会でも、援助効果を向上するための能力開発という視点から、途上国が自国の開発計画を策定し実施する能力、ドナーによる援助をマネージする能力、結果重視な開発を行うための能力、統計整備能力等々、様々な視点での能力開発の重要性が説かれるようになってきました。 (3)結果、同作業部会のタスクチームでも、公共財政管理に関する能力開発、調達に関する能力開発等に関する良い事例を集めたグッドプラクティスペーパーを作成しました(http://www.oecd.org/dataoecd/12/14/34336126.pdf)。 (4)(イ)このような背景の中向かえたHLFでも、能力開発への言及は大変多かったといえます。まず、我が国やUNDPより、「公共財政管理」や「調達」のような分野を越えた能力開発に配慮した開発援助のアプローチというものがあるのではないか、という問題提起を繰り返した結果、HLFでも能力開発に特化した分科会を行い、セッションでは、援助効果向上のために必要な能力の種類、それら強化のための方法、ドナーの能力開発に関する議論を実施し、主に以下の点についてコンセンサスを得ることができました。
(ロ)また、その他の全体セッションでも、特に途上国の参加者から様々な視点で能力開発の重要性に関する発言が多く出されました。 (5)このように、DACの場、今次開催のパリHLFでも能力開発への感心が高まったことは重大な事実といえます。私個人としては、パリHLFのローマHLFからの大きな差は、開発援助における途上国の役割の重要性に対する認識が格段に向上したこと、途上国がそれに関し自らの声をあげていること、言うなれば「援助協調から援助効果向上のためのパートナーシップ」へのシフトと考えていますが 、その具体的な現象として重要アジェンダとしてあがってきているオーナーシップ、途上国の国家開発計画へのアラインメント強化、途上国制度の利用等のアジェンダと肩を並べて、この能力開発というアジェンダもDACにおいて市民権を得つつあると考えています。 2.今後 ここで、「我が国が熱心に推してきた本アジェンダが重要性を増した!」と片手間に喜んでよいか、というとまた別の話です。今後の課題として以下のような点が挙げられます。今後ともDACでのフォローを具体的に行い、引き続き新しい動きについては皆様にご報告差し上げたいと思います。 (1)能力開発とは? 同床異夢。これは、よくDAC等参加者が多く、発言時間の限られた国際会議でよく起きる現象です。今次HLFでも、多くの発言者がその重要性に同意していた「能力開発」は人により指しているものが異なっていることが考えられます。事実、一般的に開発支援を行う際、ドナーは途上国の能力をつぶさないよう発展させるようなアプローチは何なのか、更に途上国が自身の開発計画を策定、実施しその後成果を持続・発展させていく能力の開発方法につき議論すべしとした我が方に対し、開発計画の実施に要となる公共財政管理にまつわる能力開発を中心に議論すれば十分とした英等のドナーが存在していました。このような差は今後の議論はどの点に焦点をあてるべきか、というマンデートの設定の段階から障害になることが予想されます。そのため、DACにおける今後の議論ではしばらく概念論争が続き、作業に滞りがでてくる可能性も否めません(最も、DACの存在意義の一つとして作業を通じて効したドナー間の認識の差を埋めお互いに学びあうという点があり、本件もこれに当てはまる必要コストということもできますが)。 (2)技術協力の存在意義? 能力開発の重要性を主張する意見は、技術協力不要論から来ているものもあります。また、「技術協力はdonor-drivenで能力開発に害をもたらすため不要(ザンビア)」等の発言もあり、技術協力そのものの否定につなげて議論する関係者がいるのは事実。確かに、キルギスの参加者がいっていたとおり、「開発コンサルタントは単に報告書を作成して次のプロジェクトの提案を行うだけでなく、パートナー国の人材へ技術や知識を移転できるような人材が必要」であり、技術協力の一部には反省すべき点がありますが、これは技術協力の否定論には即つながるのはおかしい。むしろ、能力開発のために必要な、有効な技術協力とはどういう形態か、真摯に技術協力の難点を洗い出して議論をしていく必要があることは確かです。我が国にとっても難しい、しかしながら重要な挑戦となると考えています。 (3)いずれにしても、今回HLFで採択したパリ宣言には、我が国の「まずはどのような能力開発が必要か、途上国の状況、ニーズにそった議論を出発点に考えるべし」という主張を汲み取った形で、途上国自身が必要な能力開発の為の戦略を策定し、ドナーがそれに添った形で支援をしていく、という項目が盛り込まれました。 (4)今後、DACでは、本件について知見のあるLenCDと共に、引き続きGOVNETが作業を継続しつつ、DAC全体でもより具体的な取組み方法(特に援助効果向上という視点から見た能力開発の重要性)について議論を行う予定です。 (パリDAC通信担当 寺門)
2005年3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
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