From Paris/パリDAC通信第38号

2005年7月22
パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ

7月7〜8日、パリにおいてDAC援助効果作業部会(WP-EFF)本会合が開催され、今年春のパリ援助効果ハイレベルフォーラム(HLF)で採択された「パリ宣言」の12の指標と2010年までに達成すべき数値目標の設定作業が行われました(会合には、DACメンバーの他、世銀及び地域開発銀行、UNDP、IMF、パートナー国(カンボジア、インドネシア、ベトナム、フィジー、キルギス、モロッコ、エチオピア、ガーナ、マリ、マダガスカル、ニジェール、セネガル、タンザニア、ウガンダ、ニカラグア)が参加しました。)。

1.指標・数値目標に関する議論
(1)今回の本会合は、パリ宣言の中にある12の項目の指標とそれらにつき10年までに達成すべき数値目標の設定方法につき議論を行い、ワーキングレベルで合意することをめざしました。
(2)2日間に及ぶ議論の結果、12の指標のうち技術的な問題等があるとして留保がかかった2つを除いては合意が形成されました。後日、本会合の議論を反映させた議長修正案が出され、現在本会合出席者によるコメント提出が行われている段階です。
(3)これらのコメントは早急に検討され、パリ宣言の署名者からのコメント取り付けを経た後に、9月のミレニアム+5会合までには内容をセットすることを目指します。
(4)その他、実際に指標をとってモニタリングを行う際に不可欠な、指標の細かい定義等(PBAとは何か、悪いProject Impolementation Unitとは何か等)も明確化が図られました。

2.パリ宣言採択後の現地の動き

パリHLFでの議論の中では、改めて各途上国の現場レベルでの援助効果向上の取組み強化の重要性が確認されました。パリHLF後、ベトナムとエチオピアでは、「パリ宣言」に現地の状況を反映させたパートナー国個別の宣言等の作成(所謂「パリ宣言」の現地化)を行い、右強化を推進しています。今後、同様の動きが各地で広がっていくことが予想されます。

3.DAC援助効果作業部会の今後

(1)これまで、援助効果作業部会(メンバーはDACメンバー諸国、世銀及び地域開発銀行、UNDP、IMF、パートナー国等) は、調和化・アラインメントタスクチーム、公共財政管理ジョイントベンチャー(JV)、調達能力向上JV、開発成果マネジメントJVに分かれ、各分野での好事例集取り纏めを中心とした作業を行ってきました(財政支援、セクター支援、公共財政管理に関する能力開発の好事例集はhttp://www.oecd.org/dataoecd/53/7/34583142.pdf、調達能力向上はhttp://www.oecd.org/dataoecd/12/14/34336126.pdfにてご覧いただけます。)。

(2)今後は、パリ宣言の実施促進、モニタリング等を中心に、援助効果作業部会の場を通じて引き続き援助効果向上アジェンダの促進が図られていく予定です。パリ宣言を経て、援助効果向上への取組みを約したパートナーの数が大幅に増えた上、アジェンダ自体が拡大、深化していくにつれ、新しい作業や好事例の収集、共有の必要性も指摘されています。現在、DAC事務局より、調和化・アラインメントに取り組むためのインセンティブ制度、途上国制度強化のための能力開発等の新しいトピックに取り組む提案がなされており、11月の次回の援助効果作業部会で議論される予定です。

(3)我が国からは、今後の作業の視点として、援助効果向上アジェンダに取り組むためにコストが発生し、一部途上国や現地ドナーへの負担が増加しているという指摘に注目して、対応策を議論する必要性を指摘しました。確かに、開発成果マネジメントの導入により、評価のための評価を行わなければならず、本当に必要なプロジェクト実施のために必要な労力・時間を確保できない、という声が我が国関係者他ドナーからも折りに触れて出されている状況は存在し、また、DACの援助審査の際にも、審査官が無差別に調和化・アラインメントの必要性を説くが、その実施コストについてはまったく配慮が図られていないとの批判も過去に出されてきました。援助効果向上アジェンダに取組むことによるコストVSそれにより得られる利益を衡量する手法については、これまでDACでも議論されたことはなく、どのように取り組むべきか、検討が必要な分野のひとつといえるでしょう。

(パリDAC通信担当 寺門雅代)


バックナンバー

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2005年5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
2005年5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
2005年4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
2005年3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
2005年3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2005年2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
2005年1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
2005年1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)
2004年12月14日第28号
DACシニアレベル会合(SLM)
2004年11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
2004年10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
2004年10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
2004年10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
2004年8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
2004年7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
2004年7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
2004年6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
2004年5月30日第19号「対フランス援助審査」

2004年5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
2004年5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

2004年4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
2004年4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」

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