From Paris/パリDAC通信第42号 |
2005年11月1日 |
ODA増額のためにODAを使う?タイトルを若干端折り過ぎた感がありますが、今回は「開発教育及び開発に関する広報費用」に関し、先般発表されたOECD開発センターによるペーパー「Policy Insights No.13 MDGs, Taxpayers and Aid effectiveness」に掲載されているデータをご紹介したいと思います。 「ODA増額のためにODAを使う?」 ―昨今、各国が発表しているODA増額中期目標を達成するためには、国民のODAに対する理解・支持を向上することも必要です。開発に関する広報及び開発教育は、そのためにも重要な活動の一つと言うことができるでしょう。このような活動にかかる費用は、DACの統計ルールでは、「ODA」として計上が可能となっています。「ODAを増額するために国民の支持向上が必要、そのためにODAを使って広報・開発教育を行う」という図式となっているのです。 先般発表されたOECD開発センターによるペーパー「Policy Insights No.13 MDGs, Taxpayers and Aid effectiveness」には、各国のODAのうち、何パーセントがこのような広報及び開発教育に費やされているか、といった興味深いデータが載っています(ウェブサイト上4ページ目に掲載の「Table 1 OECD/DAC Donors Expenditure on Information and Development Education」)。それをご覧頂くとお分かりのとおり、全ODAに対する右活動費用は、オランダ(1.86%)、ベルギー(1.79%)が突出して多くなっています。一方、低かったのは、アメリカ(0.02%)、ポルトガル(0.03%)、フランス(0.07%)、そして日本(0.09%)となっています。 この数字を目にして考えることは色々あると思います。まず、この統計は、他のODA活動と異なってDACのメンバー間で必ずしも十分に議論を行ってきていないこともあり、例えば何を「開発教育」としてカウントするか等の定義が定かでなく、統計として不十分でないかもしれないという指摘が可能です。 また、そもそも、広報・開発協力をODAとしてカウントすべきなのか、といった問題もあるかもしれません。例えば、以前パリDAC通信でも紹介した「オバケODA」批判の背景には、直接被援助国に裨益する/移転されるお金でなければ、ODAと呼ぶべきではない、といった考えもありました。広報・開発教育は、確かにドナー国において開発問題、途上国に対する理解・支持を増やすという良い効果はありますが、アンチオバケODA教ピューリタン派にとっては、このような活動費用をODAにカウントすべきでない、といった批判もあるかもしれません。 更に、こうした活動にどこまで費用を費やすべきか、そこまで費やしていいのか、といった問題もあるでしょう。日本では、例えば政府・公共機関がTVコマーシャルを流すことに対して、社会的な抵抗は比較的大きいかもしれません(青年協力隊のCMについても同様の議論があったとのこと)。一方、開発センターによる今回のペーパーでは、現在のOECDメンバー国のこうした活動のための予算は少ない、としており、欧州会議は最低ODAの3%をこのような活動に費やすよう目標を設定していることが紹介されています。 筆者の私見では、(ODAカウントの可否は別途議論が必要と思われますが)どの程度のODAを広報・開発教育に費やすべきかといった問題は、結局いつものとおり、何に、どのように費やすか、真剣に考え、その上で必要な経費を判断すればよい、ということだと考えます。例えば、インパクトは大きいけれど、メディアを駆使してやっと国民に届く広報と、確実に一人ひとりの印象に残りやすいが効率的ではないかもしれない開発教育、国際会議終了後山積みに残されているドナーの宣伝パンフレットや毎月のように送られてくるドナー報告書・・・どのように使い分けていくか、予算を配分するか、といった問題を考える必要はあると思います(因みに上記のデータでは、オランダは広報に400万ドル、開発教育に6000万ドルを費やしており、我が国はそれぞれ610万ドル、18万ドルとなっています。但し、筆者のオフィスに送られてくるパンフレットの中では、オランダのものが一番数が多く、お金がかかっているような感じです。。。あくまでも私の目でみた範囲での感想ですが。)。 また、以前、パリDAC通信でもご紹介のとおり、どのように開発に関する広報・教育を行い、どのようなメッセージを伝えるかといった点についても、検討が必要です(今回の開発センターのペーパーはこの点に関しての議論が中心となっています。)。このような議論は引き続きDACでも行っていく予定です。開発センターのペーパーでも、多くの国民が援助の効果(例 貧困層に届いているか、汚職がないか等)に対して疑義を呈している点に着目し、こうした疑問に答えるためにドナーが行っている努力の成果を国民に示していくことが重要とされています。「It is aid effectiveness, not promises of higher aid volumes that people want to hear about」(4ページ目)、一国民として、また一援助関係者として、私も同感です。
(パリDAC通信担当 寺門雅代)
2005年 9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック」 2004年 12月14日第28号「DACシニアレベル会合(SLM)」
2003年 12月13号 |