From Paris/パリDAC通信第43号 |
2005年11月28日 |
12月6日、パリにおいて、DACドナー、世銀等MDBsが集まり、「開発成果に向けたスケールアップ」に関する議論が行われる予定です。本件に関する会合は、秋の世銀・IMF合同開発委員会の際(9月26日)に初めて開催され、今回が二回目。スケールアップは、DACの場においては、比較的新しい課題といえ、今後どのような取組みとなっていくかはまだまだ具体化していないとも感じられます。今回は、9月の会合での議論を中心に、本件議論に関して提示されているいくつかの問題意識を等をご紹介したく思います。
1.9月の第一回会合 (1)本件会合は、昨今の各国によるODA増加のアナウンスに基づき、将来的なODA増加が見込まれる中、今年のG8にて、世銀が各援助者の調整を行うべき旨指摘されたことに基づき、世銀及びDACメンバーが集まり、各国のODA増加コミットメントを実現するための具体的な行動計画、特に、中長期的に予測性のある、資金を確保するための方策について議論することを目的に行われました。 (2)会合のプレスリリースでは、議論の結果、援助の予測性向上、途上国のオーナーシップ向上、効果的なドナー援助協調の重要性が確認され、具体的な取組みが必要な分野として、以下が合意されたとされています。 (イ)援助資金の予測性・柔軟性向上:ドナー資金に関する情報収集の必要性 (ロ)PRSプロセスの強化:成果重視、途上国側によるリード強化の必要性、効果的なキャパビルの実施の重要性 (ハ)途上国の開発計画実施に必要な資金の明確化・確保の場としてのCG強化 (3)しかしながら、右の作業方法等、具体的な議論については、本件会合では詰まっておらず、今次12月の会合に持ち越しとされています。例えば、援助資金の予測性向上措置として、あるドナーからは、ドナーによる年度支出計画の提出、年度始めの支出、On-budget援助の増加、次年度以降援助予想額の提示、パフォーマンスに応じた次年度以降の予算配分等が提示されましたが、そもそも単年度予算制度を採るドナーが大半を占めている中、これらがどこまで可能か、といった懸念が示された模様。途上国側の援助吸収能力の問題も大きな課題として共有されたとのことです。
2.今次会合での議論 (1)DAC事務局・世銀より、上記の議論・大方の認識共有を受け、今回は主に、以下の問題について議論することが提案されています。 (イ)オーナーシップ重視、PRS重視MTEF・結果とのリンク強化、 (ロ) 援助資金の予測性・柔軟性強化(課題:ドナーが、3~5年の見通しに関して信頼できるデータを出せるかどうか、パフォーマンスに応じた配分VS予測性のバランス(具体案としては、投資プロジェクトに占める経常費用の割合向上、財政支援増加等)。 (ハ) 調和化・アラインメント、成果重視への取組み強化、そのためのCGの利用・強化 (2)今次会合では、上記のとおり、「スケールアップ」問題として取り組む活動の論点がほぼ示されていますが、各機関がそれぞれ重視する関心事項が多様であることもあり、議論が集約するかは現時点では予測不可能と感じられます。例えば、世銀は、昨今取組みを強化しているPRS強化、CG会合の強化・利用に関心を有しており、また、あるドナーは、援助増加の対象の中心となることが予想されるアフリカに特化しつつ、援助全体の構造に関する議論(international aid architecture、バイとマルチの割合等の問題を含む)を行うべき、別のドナーは、援助量の増加に伴って発生すると思われる様々なリスク(汚職の加速、債務の増加等々)への対応が必要、とする等々、各種意見が出されています。 (3)こうした状況の下、マニングDAC議長は、12月の会合で何らかの具体的な対応策を打ち出されば、といった考えの模様ですが、今次会合の結果については、次回以降のパリDAC通信で追ってご紹介差し上げたいと思います。 (パリDAC通信担当 寺門雅代)
2005年 11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合− 2004年 12月14日第28号「DACシニアレベル会合(SLM)」
2003年 12月13号 |