From Paris/パリDAC通信第47号

2006年2月21日
OECDの開発に対する取組み強化(その2)
− 投資分野での取組み−

今回のパリDAC通信は、前回に続いて、OECDの開発に対する取組み強化の一環として「開発と投資」に関してお伝えします。

1. 背景

(1)2002年6月国連開発資金会議における「モンテレイ合意」において、ミレニアム目標(MDGs)を含む開発目標を達成するためには、ODAの他、貿易と投資の効果的な利用が重要であること、そのための協力強化が必要なこと等が確認されました。

(2)これを受け、OECDでは、2003年の閣僚理事会にて「途上国の成長と投資の促進」につき議論した際、日本提案に基づき、民間投資促進にかかる具体的な行動計画を策定することを趣旨として、「開発のための投資イニシアティブ」が立ち上がりました。

2.作業の内容

本イニシアティブでは、「開発を促進するために投資政策等はどうあるべきか?」といった途上国の疑問、「右を促進するための支援のありかたはどうあるべきか?」といったドナー側の疑問、に答えられるような成果物の作成や活動を行っています。具体的には、主に以下のような作業が行われています。

(1)投資環境改善のための政策枠組み
(イ)目的
投資環境改善に密接に関連する政策分野に関し、より投資促進的効果のある政策選択がなされるよう、途上国政府が考慮すべき点(checklist for policy considerations)を纏める。各国の発展段階に応じて優先分野が選択できるよう規範的なものではなく、政策オプションを示した形となっていることが特徴。

(ロ)作業のとり進め方:タスクフォース
OECD加盟国、非加盟国政府関係者によるタスクフォースにて議論する他、OECD投資委員会が非加盟国にて行う様々なセミナーの機会を通じ、多くの関係諸国の意見を取り入れて作成。タスクフォースには、関連国際機関や利害関係者(ビジネス界、労働界、NGO)も招かれ、議論に参加してきた。

(ハ)10の政策分野とOECDの知見の活用
投資環境改善に密接に関連した政策分野として、投資政策、投資促進・円滑化、貿易、競争、税制、企業統治(コーポレート・ガバナンス)、責任ある企業行動、人的資源開発、インフラ、金融サービス、公的ガバナンスについてとりあげ、OECDの関連委員会でも議論をし、横断的作業を実施。 

(2)ODAと開発のための投資とのシナジー(相乗効果)
ODAと投資の連携強化の方策(投資環境向上のためのODAの活用、官民の対話・協力促進等のパートナーシップ支援等)を研究。シナジー効果を挙げるための援助コミュニティー向け政策ガイダンスを作成中。

(3)途上国自身によるピア・レビュー支援を通じた能力向上
OECDの投資政策ピア・レビュー(メンバー同士の審査活動)の経験やノウ・ハウを活用し、途上国の投資政策のピア・レビューを支援し、上記目的を達成するための支援を行う。例えば、中東・北アフリカ(MENA)地域に焦点を絞った地域プログラムである「MENA−OECD投資プログラム」の中で、ピア・レビューを行う方向で議論を進めている。

3.本イニシアティブの今後
本イニシアティブでは、「投資のための政策枠組み」(上記2.(1))が主な柱と言え、これを完成し、活用していくプロセスの中で、ODAとのリンケージ(同(2))、ピア・レビュー(同(3))などに関する活動も進めていくことが予定されています。特に、ビジネス界及び非加盟国からの期待は高く、本イニシアティブの成果は、非加盟国の投資政策レビューや投資環境整備のための政策対話に用いていくことが想定されています。

(1)投資のための政策枠組みの完成まで
2006年
1月16日〜2月10日 パブリックコメント
3月1〜2日 投資のための政策枠組みタスクフォース会合
4月10〜13日  OECD投資委員会
5月23〜24日  OECD閣僚理事会(本イニシアティブの報告)

(2)投資のための政策枠組み策定後
(イ)APECとの協力のほか、アジア、アフリカ、中東、中東欧諸国等より、本枠組みを用いて実際に各地域の投資環境改善努力に向けたセミナーなどを行うこと等の提案や、要望が出されています。今後、3月のタスクフォース会合で具体的な方法等について議論されることとなっています。

(ロ)将来的には...
(a)本イニシアティブのアウトプットは、OECD内外の、途上国、またそれを支援するドナーにとって、開発促進のための投資政策等をどう策定・実施していくべきかについての参考として広く利用されること、また実際の活用を通じて得られた実体験が関係者で共有されること等が期待されます。

(b)特に、「投資環境改善のための政策枠組み」については、途上国自らが本件を参考にしつつ、PRSP等国家開発戦略に投資促進を明確に位置付け、活動優先順位付けを行い、必要な改革・活動に関して、自ら行える部分・そうでない部分を特定し、後者については、OECDや(特に具体的な支援の実施については)各種ドナーからの強力を得つつ戦略実施につなげていくことが期待されています。この観点からも、本件イニシアティブへの各種ドナーの積極的な関与が不可欠となっており、パリDAC通信でも、今後本件イニシアティブの進展につき引き続きご紹介できればと考えています。

(パリDAC通信担当:寺門雅代 / 本号作成協力:イニシアティブの内容等、事実関係の確認を中心に、OECD日本政府代表部小林麻紀書記官にご協力いただきました。)


バックナンバー

2006年
2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化
1月25日第45回「スケールアップに関する議論−続編−(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)

2005年

12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?
       (「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

2004年

12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」

3月14号

2003年

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