先月、DACにおいて、オランダの開発問題に対する取組み状 況(援助政策・実施状況等)に関する審査「援助審査」(Peer
Review )の結果が発表されました。パリでは、「front runner」と称され、革新的な援助政策 ・実施で知られるオランダ。今回、この「審査」でDACを代表
して審査国を務めたのは、(筆者の見る限り、DACの場では、 何かとオランダと対立していると見られることが多い)日本・ (筆者の見る限り、DACでは、しばしば援助の優等生といわれ
る)スウェーデン。 筆者も、審査国代表の活動の補佐を通じて、側面的ながら、こ の「審査」に関わる機会を得ることができました。そこで、こ の経験を通じて見えてきた「DACの援助審査」、「オランダの
援助」、そして、「DACそのもの」、に関する様々な点につい て、何号かに分けてご紹介したいと思います。
1.「ピアレビュー」って何?
DACでは、4〜5年の周期で、メンバー国の開発問題に対する取 組み状況(援助政策・実施状況等)に関する審査、「援助審査」を実施しています。この「援助審査」は、DACメンバー国の
中から2カ国が、DAC全体の代表として、審査国を務め、結果はDAC メンバー全体で議論されます。同僚・仲間による審査。なのでDAC ではこの「援助審査」をピアレビュー(Peer
Review)と称し ているのです 。 (ちなみに、ピアレビューは、OECDのDAC以外の多くの委員会でも実施されています。しかし、援助に関してこのようなレビ
ューを恒常的・体系的に行っているのは、現時点ではDACだけだと思われます。)。
2.何を審査するの?
「援助審査」は間違えかもしれない・・・。 実は、「援助審査」で審査されるのは、メンバー国の援助政 策、体制、実施状況だけではありません。DACでは、Peer
Review は「当該国全体の、途上国の開発問題全般に対する取組み」を審査するといいます。ここでいう「当該国全体」というのは、 援助担当の省庁もしくは機関だけでなく、当該国の関係省庁
、NGO ・ビジネスを始めとした市民社会全体を指します。また、「開 発問題全般に対する取組み」としてある(「援助における取組み」ではない)のは、これまでにもパリDAC通信でご紹介さしあげ
た、「開発問題に取り組むには、貿易、投資、環境等の援助以 外の分野を含む包括的な視点・対応(政策一貫性)が不可欠」 というOECDの考え方(http://www.devforum.jp/archives/paris/046.htm
、http://www.devforum.jp/archives/paris/047.htm)が背景にあります
。すなわち、開発援助そのものだけでなく、開発に影響を与え るその他の分野の取組みについても審査されるのです。 このような考えに基づき、「援助審査」では、主に、以下の
ような点に関して包括的な審査が行われるのです。
- 開発に対する政策枠組み一般(政策状況、開発に対する世論 の状況等)
- 援助量・配分(国・セクター・援助チャンネル(バイ・マル チ・NGO等)別の配分状況・戦略等)
- 優先セクター・特定分野における取組み状況
- 開発に向けた政策一貫性に対する取組み状況
- 組織・マネジメント
- 途上国現場での実施状況
- 人道援助
(パリDAC通信担当 寺門 雅代)
バックナンバー
2006年
8月5日第51回「協力求む!?「パリ宣言」モニタリング調査の開始」
6月13日第50回「続・一般財政支援の効果はいかに?」
5月28日第49回「OECD閣僚理事会」
5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに? 」
2月21日第47回「OECDの開発に対する取組み強化(その2)− 投資分野での取組み−」
2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化」
1月25日第45回「スケールアップに関する議論−続編−(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)」
2005年
12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?」
(「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論」
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック」
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC」
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)」
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ」
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?」
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−」
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)」
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)」
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 ) 」
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム」
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development
Co-operation」
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム」
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)」
2004年
12月14日第28号「DACシニアレベル会合(SLM)」
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性」
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−」
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント』
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−」
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」
5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」
4月18日16号「DACハイレベル会合
報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」
3月14号
2003年
12月13号
10/11月12号
7月21日11号
7月7日10号
6月22日9号
6月9日8号
5月5日7号
4月28日第6号
4月17日第5号
4月7日第4号
3月31日第3号
3月24日第2号
3月10日第1号 |