From Paris/パリDAC通信第57号


2007年9月26日
増えるODAとその配分


日本のODAの額は2000年のピークの後、2006年にはイギリスに抜かれ米、英に次ぐ世界第3位に転落してしまいました。一方で、日本を除く主要国は2000年以降ODAを大幅に増額させており、DACメンバーによるODA総額も2000年から2006年には537億ドルから1040億ドルへとほぼ倍増となっています。このように世界のODAが増える中、DACではODA増額分をどのように地域間、セクター間で配分していくべきかについての議論が活発になっています。

DACではこの議論を始めるにあたり、今後数年間に各ドナーが地域間及びセクター間でどのようにODAを配分させていくかを把握することを目的とした調査を実施しています。この調査では緊急援助や食糧援助、債務救済等の予測のつかないODAを除き、予測可能なODAを「プログラム化できる援助」として、将来数年間の「プログラム化できる援助」の見通しを地域ごと、セクターごとにとりまとめて過不足を明らかにし、この結果をドナーの政策決定に参考にしてもらうことが期待されています。一方で日本を含め多くの国が単年度予算主義でありODAの将来額について正確に見通すことが難しいことや、そもそも「プログラム化できる援助」がODAの全体の6〜7割程度であり調査の有用性に疑問を呈する意見があることなどから、同調査結果がどれくらい活用可能なものとなるかについては懐疑的な見方も少なくありません。

このようにグローバルなレベルでの援助の配分の議論が必ずしも順風満帆に行くわけではなさそうな中、グローバルなレベルではなく各途上国のカントリーレベルで援助の配分を調整していこうという議論も始まっています。オランダ、スウェーデンは、カントリーレベルで援助の予測性を高め、援助の配分を調整していくために、政府、ドナーが援助資源と開発成果の関連強化について議論する取り組み(Results, Resources and Partnership Processes)を提案しています。Results, Resources and Partnership Processesでは、カントリーレベルでの援助資源、開発成果の管理・調整プロセスについてガイドラインを作成することを目指しており、既にガーナやタンザニアなどで試行的な実施が始まっているとのことで、その結果の報告が待たれます。

DAC事務局によるシミュレーションでは、2010年にはDACドナーによるODAの量は1300億ドル近くにまで達する見込みとなっています。今後ドナーはODAを単に増やすだけでなく、協調してODAの重複や空白を避け、必要な地域、セクターに効果的に配分していくことがますます求められるようです。

(パリDAC通信担当:吉田 徹)


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2007年
8月7日第56回「2008年援助効果向上アクラハイレベルフォーラム

2006年

12月26日第55回「対オランダ援助審査からみたDAC −その4−
11月26日第54回「対オランダ援助審査からみたDAC −その3 「優等生」オランダから学べ!?−
10月19日第53回「対オランダ援助審査からみたDAC − その2 「援助審査」はお手盛り審査?−
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5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに?
2月21日第47回「OECDの開発に対する取組み強化(その2)− 投資分野での取組み−
2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化
1月25日第45回「スケールアップに関する議論−続編−(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)

2005年

12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?
       (「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論

11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

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12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
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