From Paris/パリDAC通信第59号


2007年10月30日
「パリ宣言」:開発成果のためのマネジメントに向けた取り組みとは


2005年に採択された援助効果向上のための「パリ宣言」。
現在では100を越すドナー・パートナーが「パリ宣言」に署名し、援助効果向上のための取り組みに努力しています。この「パリ宣言」には、長年援助関係者により重要だと認識されてきたことが5つの原則として明文化されており、このうちのひとつが「開発成果のためのマネジメント」です。

「開発成果のためのマネジメント」とは、"成果により焦点を当て、各種情報を活用し、意思決定を改善した援助のマネジメントや援助の実施を意味する"と「パリ宣言」は規定しています。この上で「パリ宣言」には、「開発成果のためのマネジメント」のためにドナー側が取り組むべきこと、パートナー国側が取り組むべきこと、そしてドナー及びパートナー国双方が協力して取り組むことがコミットメントとしてまとめられています。例えばパートナー国は、国家開発戦略が単なるお題目でなく予算に裏付けられたものとするよう求められたり、またドナーは、パートナー国が有する評価制度の結果に即して各国への援助計画を立てることが求められます。

これらのコミットメントに基づき具体的に何を実践するかについては、DAC援助効果作業部会の下に専門の専門家会合が設けられ、ドナーやパートナー国の専門家が定期的に議論をしています。先般開催された専門家会合では以下のような事項が議題としてあがりました。

・相互説明責任の仕組み
それぞれのパートナー国で実施される様々な援助活動について、どのような成果が上がり、また今後どのような援助が必要(あるいは不要)なのか、ドナー・パートナー国双方がきちんと説明できる相互説明責任体制を国レベルで整備するためにガイドラインを作成。

・援助実施機関のインセンティブの仕組み
援助実施機関の職員ひとりひとりが援助効果向上の取り組みに努力するには、熱意だけでなくある程度のインセンティブが介在しないと機能しません。このため、援助実施機関にどのようなインセンティブの仕組みがあり、また何が必要かについて調査。

このように、援助の世界でも成果への注目度が増している中、成果をあげるためのマネジメントの議論が活発になっています。DACは援助の評価に長年取り組んできた歴史があり、援助の評価メソドロジーを豊富に有しています。援助関係者は、これらのメソドロジーを活用しつつ「開発成果のためのマネジメント」に取り組んでいくことが、今後より一層求められるでしょう。

(パリDAC通信担当:吉田 徹)


バックナンバー

2007年
10月22日第58回「急速に存在感を増しつつあるBRICs等の「新興のドナー」
9月26日第57回「増えるODAとその配分
8月7日第56回「2008年援助効果向上アクラハイレベルフォーラム

2006年

12月26日第55回「対オランダ援助審査からみたDAC −その4−
11月26日第54回「対オランダ援助審査からみたDAC −その3 「優等生」オランダから学べ!?−
10月19日第53回「対オランダ援助審査からみたDAC − その2 「援助審査」はお手盛り審査?−
10月19日第52回「対オランダ援助審査からみたDAC −その1−
8月5日第51回「協力求む!?「パリ宣言」モニタリング調査の開始
6月13日第50回「続・一般財政支援の効果はいかに?

5月28日第49回「OECD閣僚理事会
5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに?
2月21日第47回「OECDの開発に対する取組み強化(その2)− 投資分野での取組み−
2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化
1月25日第45回「スケールアップに関する議論−続編−(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)

2005年

12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?
       (「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論

11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 )
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development Co-operation
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)

2004年

12月14日第28号DACシニアレベル会合(SLM)
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」

5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」

4月18日16号「DACハイレベル会合 報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」
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