DACでは「気候変動への適応」におけるODAの役割についての議論が活発になってきています。
1.適応〜温暖化によるリスクへの対処
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は温暖化が進行中であることを断定し、その原因が温室効果ガスの増加という人為的なものであることもほぼ断定しています。このような中、現在の社会システムは現在の気候を前提として形成されており、干ばつ、洪水、台風等の気象災害の増加及び規模の拡大、また水不足の深刻化等の今後避けられない温暖化によるリスクに対処(気候変動への適応)していく必要性が高まっています。
2.開発途上国と適応
特に開発途上国においては、現在の気象条件に対してすら十分な対応ができていないことが多く、この中でも自然資源に依存した生活を形成している社会的弱者は、自然災害による被害など、気候変動に伴う環境の変化の影響を受けやすいといえます。このためODAにより、水資源、農業、保健、防災、インフラ、生態系などの分野で適応への支援をしていくと共に、開発途上国の関係者が開発計画を立案・実施するに際して適応の視点を強化していくために必要な能力開発が必要となっています。
3.ODAにおける適応の視点強化のための閣僚宣言
この課題についてOECDでは2006年4月に環境大臣及びODA担当大臣が議論し、ODAにおいて適応の視点を強化するための閣僚宣言を採択しました。現在OECD加盟国はこの閣僚宣言に基づき、例えば、水資源の効率的利用、灌漑排水技術、洪水後の感染症予防、総合防災計画の作成、主要なインフラの防災機能の強化、植林、植生復元技術など、適応の視点を強化したODAへの取組の努力を行っています。
4.DACハイレベル会合ステートメント
DACは閣僚宣言からちょうど2年目のタイミングとなる2008年に、閣僚宣言に基づくメンバーの取組状況の見直しを行い、また今後の課題を取りまとめることとなりました。この結果は5月に開催されるDACハイレベル会合にてハイレベル・ステートメントとして採択される予定です。
「環境・気候変動」は2008年北海道洞爺湖サミットの主要テーマでもあります。気候変動の影響が既に現れていることが科学的に証明され、適応への迅速な対応が求められている中、ODAが果たす役割への期待が高まっています。
(パリDAC通信担当:吉田 徹)
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2007年
12月13日第61回「DACにおける「能力開発」の議論の開始」
11月12日第60回「急速に存在感を増しつつある「新興のドナー」(OECDの拡大とハイリゲンダム・プロセス)」
10月30日第59回「「パリ宣言」:開発成果のためのマネジメントに向けた取り組みとは」
10月22日第58回「急速に存在感を増しつつあるBRICs等の「新興のドナー」」
9月26日第57回「増えるODAとその配分」
8月7日第56回「2008年援助効果向上アクラハイレベルフォーラム」
2006年
12月26日第55回「対オランダ援助審査からみたDAC −その4−」
11月26日第54回「対オランダ援助審査からみたDAC −その3 「優等生」オランダから学べ!?−」
10月19日第53回「対オランダ援助審査からみたDAC −
その2 「援助審査」はお手盛り審査?−」
10月19日第52回「対オランダ援助審査からみたDAC −その1−」
8月5日第51回「協力求む!?「パリ宣言」モニタリング調査の開始」
6月13日第50回「続・一般財政支援の効果はいかに?」
5月28日第49回「OECD閣僚理事会」
5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに? 」
2月21日第47回「OECDの開発に対する取組み強化(その2)− 投資分野での取組み−」
2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化」
1月25日第45回「スケールアップに関する議論−続編−(第2回 DAC・世銀スケールアップ会合)」
2005年
12月11日第44回「質問:ブルガリアに派遣されている青年海外協力隊の費用は、『ODA』でしょうか?」
(「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論」
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック」
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC」
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)」
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ」
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?」
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−」
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)」
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)」
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 ) 」
3月4日第32号「パリ援助効果ハイレベルフォーラム」
2月5日第31号「Forum on Partnership for More Effective Development
Co-operation」
1月23日第30号「脆弱な国家(fragile states)における援助効果向上に関するシニアレベルフォーラム」
1月11日第29号「DACアウトリーチ戦略(その2)」
2004年
12月14日第28号「DACシニアレベル会合(SLM)」
11月16日第27号「開発援助における評価の方向性」
10月29日第26回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その4 調達キャパビル)−」
10月15日第25回『ニカラグア通信:現場から見た調和化・アラインメント』
10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−」
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
7月28日第22回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その1)−」
7月12日第21回「ODAでCO2排出権を買えるのか?」
6月12日第20号MDGsへの貢献はどう図るべきか?
5月30日第19号「対フランス援助審査」
5月18日第18号「OECD閣僚理事会(5/13-14)」
5月4日第17号 「援助量と援助効果の向上」
4月18日16号「DACハイレベル会合
報告」
4月6日15号「DACハイレベル会合(4/15-16)・予告編」
3月14号
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