2006年ODA額と2010年ODA額シミュレーションがDAC事務局により公表されました。
1.2006年ODA額
- 2006年ODA額は、1044億ドル(約12兆円)。
- 2005年ODA額から4.5%減。
- アフリカ向けが4割、このうちサブサハラアフリカ向けが9割以上。
前年の2005年はナイジェリア、イラク向け債務削減とインド洋津波災害のための人道支援という特殊要因によりODA額が過去最高を記録した年であったため、2005年ODA額から債務削減を除いて比較した場合は、0.8%減となります。アフリカ向けの多くはナイジェリアへの債務削減分であり、債務削減を除くとアフリカ向けは13%増でした。
- 最大の援助国はアメリカ、次いでイギリス、日本、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン。
- ODA額の国民所得比の平均は0.31%。
- 国民所得比の国連目標0.7%を超えたのは、スウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルグ、オランダ、デンマークのみ。
最大の援助国アメリカ(18.2%減)は、カナダ(9.9%減)、日本(9.1%減)などとともに債務削減の減少により前年を大きく下回っています。
一方、アイルランド(36%増)、オーストラリア(23%増)、スペイン(21%増)、スウェーデン(15%増)、イギリス(12%増)などが前年を大きく上回っています。
スウェーデンは国民所得比1%を超え、またEU諸国の国民所得比の平均は0.43%でした。一方、ギリシャ(0.17%)、アメリカ(0.18%)、イタリア(0.2%)、ポルトガル(0.21%)、日本(0.25%)、ニュージーランド(0.27%)、カナダ(0.29%)などが国民所得比の国連目標を大きく下回っています。
- 2002年から2006年までのODA額の平均増加率は5%。
- 2010年国際公約を達成するためには、今後12%の平均増加率の達成が必要。
2002年のモンテレイ開発資金会合で2010年までのODA増額の国際公約がなされましたが、この達成のためには増加率を加速化させる必要があることが明らかになっています。
なお、2007年ODA額の速報値は今年の4月頃にDAC事務局から公表される予定です。
2.2010年ODA額シミュレーション
DAC事務局のシミュレーションによると2010年ODA額は以下の通りとなります。
- 2010年ODA額は1323億ドル(約15兆円)。
- 最大の援助国はアメリカ、次いでドイツ、イギリス、フランス、イタリア、日本、スペイン。
- ODA額の国民所得比の平均は0.35%。
- 国連目標の国民所得比0.7%を超えるのは、スウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルク、デンマーク、オランダ、ベルギー。
2006年ODA額と比較すると全体では27%増であり、ギリシャ(231%増)、イタリア(179%増)、ポルトガル(160%増)、スペイン(108%増)、ドイツ(57%増)、ベルギー(53%増)、フィンランド(42%増)などは大幅な増加、EUメンバー全体でも平均で43%増が見込まれています。
一方で、アメリカ(5%増)、デンマーク(8%増)、オランダ(9%増)などは、相対的に小さな増加に留まっており、日本は唯一減少(10%減)すると見込まれています。
またスウェーデン、ノルウェー、ルクセンブルクが国民所得比1%を超え、EU諸国の国民所得比の平均は0.57%となり、2005年にEU諸国が合意した0.51%の目標は達成が見込まれています。
一方で、アメリカ(0.17%)、日本(0.21%)、カナダ(0.3%)、ニュージーランド(0.33%)、オーストラリア(0.37%)などが国民所得比の国連目標を大きく下回ると見込まれています。
主な国の2010年ODA額は以下の通りです。
- アメリカ:247億ドル、国民所得比は0.17%。
- ドイツ:163億ドル、国民所得比0.51%。
- イギリス:148億ドル、国民所得比0.56%。
- フランス:125億ドル、国民所得比0.51%(2015年までに0.7%達成を目指す)。
- イタリア:101億ドル、国民所得比0.51%。
- 日本:100億ドル、国民所得比0.21%(2009年までの5年間で100億ドル積み増し)。
- スペイン:79億ドル、国民所得比0.59%(2012年までに0.7%達成を目指す)。
このシミュレーションは2002年のモンテレイ開発資金会合や2005年のグレンイーグルスサミットにおける各国の国際公約等をもとにしています。2008年秋にはモンテレイ開発資金会合のフォローアップ会合が開催される予定であり、国際公約の途中経過が議論される予定です。
(シミュレーションの詳細はhttp://www.oecd.org/dataoecd/7/20/39768315.pdfをご覧下さい。)
(パリDAC通信担当:吉田 徹)
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12月21日第62回「気候変動への適応とODA」
12月13日第61回「DACにおける「能力開発」の議論の開始」
11月12日第60回「急速に存在感を増しつつある「新興のドナー」(OECDの拡大とハイリゲンダム・プロセス)」
10月30日第59回「「パリ宣言」:開発成果のためのマネジメントに向けた取り組みとは」
10月22日第58回「急速に存在感を増しつつあるBRICs等の「新興のドナー」」
9月26日第57回「増えるODAとその配分」
8月7日第56回「2008年援助効果向上アクラハイレベルフォーラム」
2006年
12月26日第55回「対オランダ援助審査からみたDAC −その4−」
11月26日第54回「対オランダ援助審査からみたDAC −その3 「優等生」オランダから学べ!?−」
10月19日第53回「対オランダ援助審査からみたDAC −
その2 「援助審査」はお手盛り審査?−」
10月19日第52回「対オランダ援助審査からみたDAC −その1−」
8月5日第51回「協力求む!?「パリ宣言」モニタリング調査の開始」
6月13日第50回「続・一般財政支援の効果はいかに?」
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5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに? 」
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2月7日第46回「OECDの開発に対する取組み強化」
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(「DACリスト」改訂)
11月28日第43回「スケールアップに関する議論」
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック」
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC」
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)」
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ」
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?」
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−」
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)」
4月18日第34回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その3 能力開発)」
3月19日第33回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告(その2 パリ宣言と我が国の対応 ) 」
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10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−」
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
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