マニング議長による最後となる2007年DAC議長報告書が公表されました。
1.援助の額
●マニング議長在任中の2002年から2006年にかけて援助の額は575億ドルから778億ドルへと急増した。
●増加分のほとんどはイラク向けであり、2005、2006年にはイラクは援助の最大の受取国であった。
●また増加分の内訳は、債務救済、人道援助がほとんどであり、それ以外の援助は横ばいであった。
2.援助の配分
●LDC及びOLIC諸国、またサブサハラアフリカ諸国向け援助は大きく増加した。
●一方で中所得国や紛争後時間が経過した国への援助は急減した。
●また緊急援助や人道援助の割合は増加した。
3.援助の効果向上
●アンタイド化の割合は増加したが、報告されていないものも多い。
●援助のアライメント、調和化に対するドナーの取組には大きな格差がある。
●技術協力については、定義をより明確にし、能力開発へと結びつける必要がある。
●アクターの多さから保健セクターは援助効果向上の取組が特に重要である。
●被援助国主体の戦略、ドナーの多様な活動、インパクト評価が重要である。
●人権、ジェンダー、環境分野においてもアライメント、調和化を推進する必要がある。
4.援助審査からの12の教訓
マニング議長在任中の22の援助審査から、有効な援助実施体制について12の教訓がまとめられています。
5.まとめ
●被援助国、特にサブサハラアフリカ諸国では財政収入が増え、社会セクターへの支出が増加している。
●絶対貧困層10億人未満達成、乳幼児死亡者数1000万人以下達成、サブサハラアフリカにおける就学者の36%の増加、アフリカにおけるはしかによる児童の死亡の91%減といった有望な徴候が現れている。
●ただし、依然として多くの貧困国にとっては、ミレニアム開発目標達成は長い道のりである。
マニング議長の退任を受け、1月にドイチャー新議長が就任しました。
(DAC議長報告の詳細はこちらをご覧ください。http://www.oecd.org/document/32/0,3343,en_2649_33721_40056608_1_1_1_1,00.html)
(パリDAC通信担当:吉田 徹)
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2月4日第65回「「アクラハイレベルフォーラムの概要」
1月21日第64回「「パリ宣言」第2回モニタリング調査の開始」
1月7日第63回「謹賀新年:2006年ODA額と2010年ODA額シミュレーション」
2007年
12月21日第62回「気候変動への適応とODA」
12月13日第61回「DACにおける「能力開発」の議論の開始」
11月12日第60回「急速に存在感を増しつつある「新興のドナー」(OECDの拡大とハイリゲンダム・プロセス)」
10月30日第59回「「パリ宣言」:開発成果のためのマネジメントに向けた取り組みとは」
10月22日第58回「急速に存在感を増しつつあるBRICs等の「新興のドナー」」
9月26日第57回「増えるODAとその配分」
8月7日第56回「2008年援助効果向上アクラハイレベルフォーラム」
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12月26日第55回「対オランダ援助審査からみたDAC −その4−」
11月26日第54回「対オランダ援助審査からみたDAC −その3 「優等生」オランダから学べ!?−」
10月19日第53回「対オランダ援助審査からみたDAC −
その2 「援助審査」はお手盛り審査?−」
10月19日第52回「対オランダ援助審査からみたDAC −その1−」
8月5日第51回「協力求む!?「パリ宣言」モニタリング調査の開始」
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5月15日第48回「一般財政支援の効果はいかに? 」
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11月28日第43回「スケールアップに関する議論」
11月1日第42回「ODA増額のためにODAを使う?」− ODAに占める開発教育・広報費の割合−
9月18日第41回「OECD/DAC事務局による2010年におけるODA量のシミュレーションと最近のDAC内外におけるホットトピック」
9月6日第40回「9月国連総会(首脳会合:World Summit)とOECD/DAC」
8月22日第39回「援助効果ハイレベルフォーラム・フォローアップ(その2)」
7月22日第38回「パリ援助効果ハイレベルフォーラムフォローアップ」
6月27日第37回「オバケODA」を退治せよ?」
5月28日第36回「開発援助サポーター倍増作戦−DAC諸国における広報−」
5月14日第35回「パリ援助効果ハイレベルフォーラム報告とそのフォローアップ(その4 開発成果マネジメント)」
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10月1日第24回「DACアウトリーチ戦略−対外協力関係の今後−」
8月10日第23回「ローマ調和化宣言」のその後−パリ・ハイレベルフォーラムに向けて(その2 開発成果マネジメント)−」
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